説明

1以上のアミノ酸レベルが増加した植物

本発明は、トレオニンデアミナーゼおよび/またはAHASをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む構築体を提供する。また、該構築体で形質転換されたトランスジェニック植物ならびにこれらの植物から由来する種子および子孫を提供する。該トランスジェニック植物は、その同一種の非トランスジェニック植物に比較して増加したレベルの1以上のアミノ酸を有する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2003年5月7日に出願された米国仮出願第60/468,727号(ここに出典明示してその全てを本明細書の一部とみなす)の優先権を主張する。
【0002】
本発明の分野は、作物学的バイオテクノロジーである。より詳細には、本発明は、植物中のアミン酸レベルを増加させるためのバイオテクノロジーアプローチに関する。
【0003】
大豆およびトウモロコシを含めた多数の重要な作物は、栄養的に完全であるようないくつかのアミノ酸の十分な量または正確なバランスを含んでいない。これは、分岐鎖アミノ酸(BCAA)のロイシン、イソロイシンおよびバリンには特に真実である。BCAAは、ヒトがこれらの分子を合成できなく、従って食事からそれらを得なければならないので、必須アミノ酸である。イソロイシンは、トレオニンから合成される分枝鎖アミノ酸である。トレオニン自体はアスパルテートから合成される。アスパルテートおよびBCAA間の合成経路は、種々のアミノ酸によりアロステリックに阻害されるいくつかの酵素を含む。BCAAの合成に用いられる酵素は、アスパラギン酸キナーゼ(AK)、二機能性のアスパラギン酸キナーゼ−ホモセリンデヒドロゲナーゼ(AK-HSDH)、イソプロピルリンゴ酸合成酵素、トレオニンデアミナーゼ(TD)およびアセトヒドロキシ酸合成酵素(AHAS)を含む。特に、トレオニンデアミナーゼ (EC 4.2.1.16) (TD、トレオニンデヒドロゲナーゼ;L−トレオニンヒドロリアーゼ(脱アミノ化)およびアセトヒドロキシ酸合成酵素(AHAS;アセト乳酸合成酵素(EC 4.1.3.18))は、BCAAの生合成における鍵となる酵素である。
【0004】
E. coliにおいて、トレオニンデアミナーゼは、別々の生合成および生分解性の形態で存在する。トレオニンデアミナーゼの生合成形態は、遺伝子ilvAによりコードされ、植物および微生物中の分枝鎖アミノ酸の生合成における第1の関係する工程を触媒する。この工程は、L−トレオニンを脱水および脱アミノ化して、ピリドキサール5'−ホスフェート(PryP)を利用することにより2−オキソブチレートを生成する。生合成のトレオニンデアミナーゼは、L−イソロイシンによりアロステリック調節に付される(Umbarger, Science, 123:848 (1956); Umbarger, Protein Science, 1:1392 (1992); Changeux, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol., 26:313 (1961); Monodら, J. Mol. Biol., 6:306 (1963))。トレオニンデアミナーゼのいくつかの調節解除された酵素は、植物および細菌の双方から存在する。Feldbergら, Eur. J. Biochem., 21:438446 (1971); Mouradら, Plant Phys., 107:43-52 (1995); Fisherら, J. Bact., 175:66056613 (1993); Taillonら, Gene, 63:245-252 (1988); Mockelら, Mol. Microbiol., 13:833-842 (1994); Guillouetら, Appl Environ Microbiol., 65:3100-3107 (1999); Slaterら, Nature Biotechnology, 7:1011-1016 (1999)参照。
【0005】
生合成形態とは対照的に、トレオニンデアミナーゼの生分解性形態はAMPにより活性化され、L−イソロイシンによるフィードバック調節に非感受性であり、高濃度のアミノ酸を含有し、グルコースを含まない培地中で嫌気的に生成される。さらに、E. coliにおいて、トレオニンデアミナーゼの生分解性形態は別々の遺伝子(tdcB)によりコードされる。
【0006】
AHAS酵素は、細菌、酵母および植物のごとき多数の生物体で保存される(Singhら, Proc. Natl. Acad. Sci., 88:4572-4576 (1991))。E. coliおよび他の腸内細菌において、AHASは、各々、ilvGおよびilvMと呼ばれる、2つの大きいおよび2つの小さいサブユニットよりなるヘテロ四量体の蛋白質である(Weinstockら, J. Bacteriol., 174:5560-6 (1992))。その四量体の酵素活性は、完全に大サブユニットに含まれている。小サブユニットは、酵素安定性および調節目的に必要とされる。植物において、凝集状態は種間で異なる。Arabidopsis thalianaのごときいくつかの植物において、単一構造遺伝子はAHAS酵素をコードし(Anderssonら, Plant Cell Reports, 22:261-267 (2003))、一方、タバコのごとき他の植物種において、1を超える機能的な遺伝子が存在し得る。また、細菌のように植物AHAS酵素は、フィードバック阻害される。植物AHAS酵素は、いくつかの商業的な除草物質の標的である(米国特許第6,727,414号)
【0007】
AHASは、一方ではロイシンおよびバリンのレベルの平衡、他方ではイソロイシンのレベルの平衡において重要な役割を果たす。AHASは、ロイシンとバリンの双方への前駆体のアセト乳酸へのピルビン酸の転化を駆動するのに重要である。また、AHASは、イソロイシンへの前駆体のアセトヒドロキシブチレートへの2−オキソブチレートの転化を駆動する。AHASがピルビン酸より2−オキソブチレートに基質優先を有するので、酵素反応は、イソロイシンの生成を助ける。イソロイシンレベルは、イソロイシンによるTDのフィードバック阻害により抑制され、一方、AHASはバリンおよびロイシンによってフィードバック阻害される。また、ロイシン生成は、イソプロピルリンゴ酸合成酵素のフィードバック阻害により調節される。
【0008】
BCAAは、蛋白質加水分解産物からのアミノ酸の直接的抽出により商業上生成される。例えば、イソロイシン生成の現在のレベルは、1年当たり400計量トン未満であるが、イソロイシンの需要は増大している。従って、単離したBCAAにおける不足の供給、ならびにそのより経済的な源の提供のために、増加したレベルのアミノ酸を合成するように設計された植物が必要とされている。
【0009】
発明の概要
本発明は、第1の発現カセットが、フィードバック非感受性(feedback insensitive)トレオニンデアミナーゼをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含み、かつ第2の発現カセットが、AHASをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含む複数植物発現カセットを含むDNA構築体を含む。1つの具体例において、本発明のDNA構築体は、第1の発現カセットが、フィードバック非感受性トレオニンデアミナーゼをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含み、第2の発現カセットが、AHASの大サブユニットを含み、かつ第3の発現カセットがAHASの小サブユニットをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含む複数植物発現カセットを含む。1つの具体例において、各プロモーターは、種子強化プロモーターである。もう一つの具体例において、各プロモーターは、ナピン(napin)、7S アルファ、7S アルファ'、7S ベータ、USP 88、強化USP 88、アルセリン5(Arcelin 5)およびオレオシン(Oleosin)よりなる群から選択される。1つの具体例において、少なくとも2つの異なる種子強化プロモーターが存在する。
【0010】
本発明の1つの態様において、その第1のカセットは、配列番号:22を含むフィードバック非感受性トレオニンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。本発明の1つの具体例において、ポリヌクレオチドは配列番号:22である。本発明のもう一つの態様において、第1のカセットは、L447F、もしくはL481F、もしくはL481Y、もしくはL481P、もしくはL481E、もしくはL481T、もしくはL481Q、もしくはL481I、もしくはL481V、もしくはL481M、もしくはL481K位でのアミノ酸置換を含むトレオニンデアミナーゼ変異体対立遺伝子またはそのサブユニットをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。本発明のさらにもう一つの態様において、トレオニンデアミナーゼ変異体対立遺伝子をコードするポリヌクレオチドは配列番号:2を含む。本発明のもう一つの態様において、ポリヌクレオチドは配列番号:2である。
【0011】
本発明の1つの具体例において、第1のカセットは、トレオニンデアミナーゼ、そのトレオニンデアミナーゼ変異体対立遺伝子、またはサブユニットをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結した色素体(plastid)輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0012】
もう一つの具体例において、第2の発現カセットは、AHASの大サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む。1つの具体例において、AHASの大サブユニットをコードするポリヌクレオチドは配列番号:16を含む。1つの具体例において、ポリヌクレオチドは配列番号:16である。さらにもう一つの具体例において、色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、AHASの大サブユニットをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結する。1つの具体例において、第3の発現カセットは、AHASの小サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む。もう一つの具体例において、AHASの小サブユニットをコードするポリヌクレオチドは、配列番号:17を含む。1つの具体例において、ポリヌクレオチドは配列番号:17である。さらにもう一つの具体例において、色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、AHASの小サブユニットをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結する。
【0013】
1つの態様において、DNA構築体は、第1の発現カセットが、フィードバック非感受性トレオニンデアミナーゼをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含み、かつ第2の発現カセットが、AHASの大サブユニットをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含む複数の植物発現カセットを含む。もう一つの態様において、各プロモーターは、種子強化プロモーターである。さらにもう一つの態様において、各種子強化プロモーターは、ナピン、7S アルファ、7S アルファ'、7S ベータ、USP 88、強化USP 88、アルセリン5およびオレオシンよりなる群から選択される。もう一つの態様において、構築体において少なくとも2つの異なる種子強化プロモーターが存在する。
【0014】
1つの具体例において、第1のカセットは、配列番号:22を含むフィードバック非感受性トレオニンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。1つの具体例において、ポリヌクレオチドは配列番号:22である。もう一つの具体例において、第1のカセットは、L447F、もしくはL481F、もしくはL481Y、もしくはL481P、もしくはL481E、もしくはL481T、もしくはL481Q、もしくはL481I、もしくはL481V、もしくはL481M、もしくはL481K位のアミノ酸置換を含むトレオニンデアミナーゼ変異体対立遺伝子を含む。もう一つの具体例において、トレオニンデアミナーゼ変異体対立遺伝子をコードするポリヌクレオチドは、L447F、もしくはL481F、もしくはL481Y、もしくはL481P、もしくはL481E、もしくはL481T、もしくはL481Q、もしくはL481I、もしくはL481V、もしくはL481M、もしくはL481K位のアミノ酸置換を含む配列番号:2を含む。1つの具体例において、ポリヌクレオチドは配列番号:22である。本発明の1つの態様において、第1のカセットは、トレオニンデアミナーゼをコードする該ポリヌクレオチドに作動可能に連結した色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。もう一つの態様において、第2の発現カセットは、AHASの大サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む。さらにもう一つの態様において、AHASの大サブユニットをコードするポリヌクレオチドは、配列番号:16を含む。1つの具体例において、該ポリヌクレオチドは配列番号:16である。さらにもう一つの態様において、色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、AHASの該大サブユニットをコードする該ポリヌクレオチドに作動可能に連結する。
【0015】
1つの具体例において、そのDNA構築体は、植物細胞中で機能的なプロモーターを含む発現カセットが、単量体AHASをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結する複数の植物発現カセットを含む。もう一つの具体例において、DNA構築体は、植物細胞中で機能的なプロモーターを含む第1の発現カセットが、AHASの大サブユニットをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結され、植物細胞中で機能的なプロモーターを含む第2の発現カセットが、AHASの小サブユニットをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結する複数の植物発現カセットを含む。さらにもう一つの具体例において、各プロモーターは種子強化プロモーターである。さらにもう一つの具体例において、該種子強化プロモーターの各々は、ナピン、7S アルファ、7S アルファ'、7S ベータ、USP 88、強化USP 88、アルセリン5およびオレオシンよりなる群から選択される。もう一つの具体例において、少なくとも2つの異なる種子強化プロモーターが存在する。1つの具体例において、第1のカセットは、配列番号:16を含むAHASの大サブユニットを含む。1つの具体例において、ポリヌクレオチドは配列番号:16である。もう一つの具体例において、第1のカセットは、AHASの該大サブユニットをコードする該ポリヌクレオチドに作動可能に連結した色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。もう一つの具体例において、第2のカセットは、AHASの小サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む。もう一つの具体例において、第2のカセットは、配列番号:17を含むAHASの小サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む。1つの具体例において、ポリヌクレオチドは配列番号:17である。もう一つの具体例において、第2のカセットは、AHASの該小サブユニットをコードする該ポリヌクレオチドに作動可能に連結した色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0016】
また、本発明は、その同一植物種の非トランスジェニック植物からの種子に比較して、種子中でアミノ酸レベルにおける増加を有するトランスジェニック双子葉植物の生産方法であって、a)フィードバック非感受性トレオニンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む構築体を含む導入遺伝子を、双子葉植物の再生可能な細胞に導入し;b)該再生可能な細胞を双子葉植物に再生し;c)該植物から種子を収穫し;d)その同一植物種の非トランスジェニック植物からの種子に比較して、アミノ酸レベルが増加した1以上の種子を選択し;次いで、e)該種子を植える工程を含み、ここに、イソロイシンが増加したレベルで存在する場合に、少なくとも1つのさらなるレベルのアミノ酸も増加する該生産方法を提供する。1つの具体例において、アミノ酸レベルの増加は、a)Ileならびに1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe、またはb)1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Leu、Val、Gln、Tyr、Thr、Lys、Ala、SerおよびPheの濃度における増加を含む。本発明は、その生産方法により生成されたトランスジェニック大豆植物を含む。
【0017】
本発明は、アミノ酸含量の増加を有するトランスジェニック双子葉植物の生産方法であって、a)単量体AHASをコードするポリヌクレオチドを含む構築体、またはAHASの大サブユニットをコードするポリヌクレオチドもしくはAHASの小サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む構築体を含む導入遺伝子を、双子葉植物の再生可能な細胞に導入し;b)該再生可能な細胞を双子葉植物に再生し;c)該植物から種子を収穫し;d)その同一植物種の非トランスジェニック植物からの種子に比較して、アミノ酸レベルが増加した1以上の種子を選択し;次いで、e)該種子を植える工程を含む該生産方法を提供する。1つの具体例において、双子葉植物は大豆植物またはアブラナ(canola)植物である。1つの具体例において、アミノ酸レベルの増加は、SerまたはValの濃度の増加を含む。1つの具体例において、本発明は、該方法によって生成されたトランスジェニック大豆植物を含む。
【0018】
また、本発明は、トランスジェニック大豆から生成されたミール(meal)を含む。
また、本発明は、本発明の種子を含む容器に指向される。本発明の植物または植物群の種子は、例えば、バッグのごとき容器に入れることもできる。本明細書に用いた容器はかかる種子を保持することができるいずれかの物である。容器は、好ましくは、少なくとも約10%、約25%、約50%、約75%、または約100%の種子が、本発明の種子でである約1,000個、約5,000個または約25,000個を超える種子を含む。好ましくは、本発明の種子が大豆である場合、容器は好ましくは約60ポンドまたは約130,000個の豆を含むバッグである。
【0019】
本発明は、本発明のトランスジェニック植物または植物パーツ(例えば、種子)から作成された動物またはヒトの食品にさらに指向される。かかる食品は、例えば、かかる材料から作られた中間生成物を含めた、穀物、ミール、粉末、種子、シリアル等から作成できる。
【0020】
発明の詳細な記載
本発明は、そのゲノムが、酵素的に機能的な変異体およびサブユニットを含めた、トレオニンデアミナーゼ (TD)またはそのサブユニットをコードする単離核酸を有するトランスジェニック植物を提供する。かかるトレオニンデアミナーゼまたはトレオニンデアミナーゼサブユニットは、好ましくは、遊離L−イソロイシンまたはイソロイシンのアミノ酸アナログによる阻害に抵抗性である。別法の好ましい具体例は、植物のIle含量ならびに1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe含量が、本来および外因性のトレオニンデアミナーゼ、またはそのサブユニットの速度論または阻害特性に相違もしくは類似性に拘わらず増加するように発現されるトレオニンデアミナーゼまたはそのサブユニットをコードする核酸を有する。例えば、当該技術分野においてよく知られた技術を用いて、外因性のトレオニンデアミナーゼ酵素を、天然の酵素の位置から離れた細胞成分において優位に発現できる。トレオニンデアミナーゼまたはそのサブユニットの発現は、かかる発現の不存在下で存在するレベルを超えて植物中のIleのレベルを上昇でき、1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheのレベルを上昇できる。また、その核酸は、イソロイシンの生合成に関与する他の酵素、例えば、アスパラギン酸キナーゼ、二機能性アスパラギン酸キナーゼ−ホモセリンデヒドロゲナーゼまたはアセトヒドロキシ酸合成酵素をコード化し得る。
【0021】
また、本発明は、遊離Ileのレベルの上昇を生じ、1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheのレベルの上昇を生じる植物を得る方法に関連する。かかる過剰生成は、トレオニンデアミナーゼをコードする単離核酸の導入および発現に起因する。さらに、本来の大豆トレオニンデアミナーゼは、L−イソロイシンによるフィードバック阻害に感受性であり、それは生合成経路の調節部位を構成する。また、本発明において供される方法を用いて、かかるフィードバック阻害に抵抗性であるトレオニンデアミナーゼをコードする核酸の導入により植物中の遊離Ileレベルの増加を生成し、1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheのレベルの増加を生成し得る。かかるトレオニンデアミナーゼをコードする核酸は、双子葉植物(例えば、豆果)ならびに単子葉植物(例えば、穀物)を含めた種々の植物に導入できる。
【0022】
定義
本開示の文脈において、多数の用語が利用される。「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」、「核酸断片」および「単離核酸断片」なる用語は、本明細書において交換可能に用いられる。これらの用語は、ヌクレオチド配列等を包含する。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーで有り得、それは所望により合成、非天然または変更されたヌクレオチド塩基を含む。DNAのポリマーの形態でのポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAまたはその混合物の1以上のセグメントより構成され得る。
【0023】
本明細書に用いた形質転換された植物、植物組織、植物パーツまたは植物細胞におけるIleならびに1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheの「変更された」レベルは、対応する形質転換されていない植物、植物組織、植物パーツまたは植物細胞中で判明したレベルより大きいかまたは小さいレベルである。一般的には、Ileならびに1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheの「変更された」レベルは、対応する形質転換されていない植物、植物組織、植物パーツまたは植物細胞中で判明したレベルより大きいものである。
【0024】
「相補的」なる用語を用いて、核酸鎖の配列が、全てまたは一部分の参照されたポリヌクレオチド配列にハイブリダイズできることを意味する。例示的には、ヌクレオチド配列「TATAC」は、参照配列5'-TATAC-3'に対して100%の同一性を有するが、参照配列5'-GTATA-3'に100%相補的である。
【0025】
「に対応する」なる用語を本明細書に用いて、ポリヌクレオチド、例えば、核酸が、参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部分に少なくとも部分的に同一(必ずしも厳密に進化的に関連しない)であることを意味する。
【0026】
本明細書に用いた「調節解除された酵素」とは、例えば、変異誘発性、切形等により修飾された酵素をいい、その結果、代謝物質による酵素の触媒活性のフィードバック阻害の範囲は、未修飾の酵素と比較して、代謝物質の存在下で酵素が活性の増強を示すように低下される。
【0027】
トレオニンデアミナーゼに関して本明細書に用いた「そのドメイン」なる語句は、全長トレオニンデアミナーゼの構造的または機能的なセグメントを含む。構造的なドメインは、トレオニンデアミナーゼ内の同一視できる構造を含む。構造的なドメインの例は、アルファらせん、ベータシート、活性部位、基質または阻害物質の結合部位等を含む。機能的なドメインは、イソロイシン結合ポケット、活性部位または基質もしくは阻害物質の結合部位のごとき同定可能な機能を果たすトレオニンデアミナーゼのセグメント、を含む。トレオニンデアミナーゼの機能的なドメインは、イソロイシンの生合成経路における1工程を触媒できるトレオニンデアミナーゼのそれらの部分を含む。従って、機能的なドメインは、トレオニンデアミナーゼの酵素的に活性な断片およびドメインを含む。また、トレオニンデアミナーゼの変異体ドメインが考えられる。変異体ドメインを作成するために利用された野生型トレオニンデアミナーゼ核酸は、例えば、Escherichia coli、Salmonella typhimuriumまたはArabidopsis thalianaからのトレオニンデアミナーゼのドメインをコードするいずれかの核酸を含む。
【0028】
本明細書に用いた「外因性の」トレオニンデアミナーゼは、宿主細胞に導入された単離核酸によりコードされたトレオニンデアミナーゼである。かかる「外因性の」トレオニンデアミナーゼは、その本来の形質転換されていない状態で細胞中に存在するいずれかのDNA塩基配列と一般的に同一ではない。「内因性の」もしくは「本来の」トレオニンデアミナーゼは、宿主細胞または生物体に天然に存在するトレオニンデアミナーゼである。
【0029】
本明細書に用いた、遊離Ileおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheの植物細胞、植物組織、植物パーツもしくは植物中の「増加した」または「上昇した」レベルは、形質転換されていない植物細胞、植物組織、植物パーツもしくは植物中で判明したレベル、すなわち、ゲノムが内因性トレオニンデアミナーゼ核酸またはそのドメインの存在により変更されていないものの約2〜100倍、好ましくは約5〜50倍、より好ましくは約10〜30倍であるレベルである。例えば、形質転換された植物種子中の遊離Ileおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheのレベルは、形質転換されていない親植物種子中のものまたはキメラ植物における形質転換されていない種子と比較される。植物中で判明し本発明において記載された種々のアミノ酸の名称、それらの3および1文字略語、ならびにそれらをコードするDNAコドンを表1に供する。
【0030】
【表1】

【0031】
トレオニンデアミナーゼをコードする核酸、および輸送ペプチドまたはマーカー/レポーター遺伝子をコードする核酸は、それらが天然の源から得られ、それらが通常存在する細胞内にもはや存在しないという点で「単離され」ている。かかる単離核酸は、in vitroにて少なくとも部分的に調製または操作され、例えば、それらが通常見出され、生成および増幅される細胞から単離され得る。また、かかる単離核酸は、それらが外因性の核酸と組み合わせる点で「組換え」とできる。例えば、組換えDNAは、外因性のプロモーター、または選択された宿主細胞に内因性のプロモーターに作動可能に連結した単離DNAとなり得る。
【0032】
本明細書に用いた「本来の」遺伝子または核酸は、その遺伝子または核酸がin vitroにて変化または操作されなかったこと、すなわち、それはin vitroにて単離、精製、増幅または変異しなかった「野生型」遺伝子または核酸であることを意味する。
【0033】
「色素体」なる用語は、アミロプラスト、葉緑体、有色体、脂肪体、エライオプラスト(elaioplast)、エオプラスト(eoplast)、エチオプラスト、白色体および原色素体を含む植物細胞器官のクラスをいう。これらの細胞器官は自己再生し、その植物種に依存して、通常逆繰り返し領域を含むサイズが約120〜約217kbの範囲にある環状のDNA分子である、一般的に「色素体ゲノム」と呼ばれるものを含む。
【0034】
本明細書に用いた「ポリペプチド」とは、各々、アミノおよびカルボキシレート基を有し、ペプチド結合に連結しないN末端およびC末端を除いて、ペプチド結合によりすべてが一緒に連結したアミノ酸の連続的な鎖を意味する。ポリペプチドは、いずれの長さも有し、例えば、グリコシレーションまたはリン酸化により翻訳後修飾できる。
【0035】
「イソロイシンのアミノ酸アナログによる阻害に抵抗性または寛容性」である本明細書に用いた植物細胞、植物組織もしくは植物は、対応する野生型トレオニンデアミナーゼより、L−イソロイシンまたはL−イソロイシンのアナログの存在下で少なくとも約10%を超えるトレオニンデアミナーゼ活性を保持する植物細胞、植物組織もしくは植物である。一般的には、「イソロイシンによる阻害に抵抗性または寛容性」である植物細胞、植物組織もしくは植物は、当該技術分野において知られた方法により決定される、形質転換されていない植物細胞、植物組織もしくは植物の成長を通常阻害するある量のイソロイシンのアミノ酸アナログにおいて成長できる。例えば、イソロイシンのアミノ酸アナログによる阻害に実質的に抵抗性または寛容性であるトレオニンデアミナーゼをコードするDNA分子で形質転換した同型接合体バッククロス転化した同系植物は、対応する、すなわち、実質的に同質遺伝子の反復性の同系植物の成長を阻害するある量のイソロイシンのアミノ酸アナログにおいて成長する。
【0036】
本明細書に用いた「イソロイシンまたはイソロイシンのアミノ酸アナログによる阻害に抵抗性または寛容」であるトレオニンデアミナーゼは、その抵抗性/寛容性および野生型トレオニンデアミナーゼが、当量のイソロイシンまたはイソロイシンのアミノ酸アナログに曝露された場合に、対応する「野生型」または本来の感受性のトレオニンデアミナーゼより約10%を超えて高い活性を保持するトレオニンデアミナーゼである。好ましくは、抵抗性または寛容なトレオニンデアミナーゼは、対応する「野生型」または本来の感受性のトレオニンデアミナーゼより約20%を超えて高い活性を保持する。
【0037】
一般的な概念
予め選択されたトレオニンデアミナーゼ核酸は最初に単離され、また植物起源のものでないならば、植物細胞中の遺伝子発現に必要な調節シグナルを含むようにin vitroにて修飾されなけばならない。その外因性の遺伝子を修飾して、これらの細胞器官に遺伝子産物を向けるために色素体輸送ペプチド配列をコードする配列を加えることもできる。
【0038】
Ileならびに1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheの生合成を変更するために、抵抗性トレオニンデアミナーゼコードする核酸(「遺伝子」)を同定された植物細胞およびそれらの形質転換された細胞に直接的または間接的のいずれかにて導入しなければならない。その遺伝子は、安定的に、植物細胞ゲノムに組み入れることができる。遺伝子の転写シグナルは植物細胞により認識され、植物細胞に機能的でなければならない。すなわち、遺伝子は、メッセンジャーRNAに転写され、mRNAは植物核中で安定し、翻訳のために細胞質に無傷に輸送されなければならない。遺伝子は、植物細胞リボソームにより認識され適当に翻訳されるべき適当な翻訳シグナルを有することができる。そのポリペプチド遺伝子産物は、細胞質中のかなりの蛋白質分解攻撃を回避し、酵素活性を与える三次元配置を取ることができなければならない。トレオニンデアミナーゼは、さらに、イソロイシンおよびその誘導体の生合成において機能でき;すなわち、それは必要な基質を得て、かつ適当な産物を渡すために、(おそらく色素体中の)生合成におけるフランキング工程を触媒する本来の植物酵素の近くで局在化できる。
【0039】
これらの全ての条件をたとえ満たしたとしても、Ileならびに1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheの成功した過剰生成は、予測可能な事象ではない。トレオニンデアミナーゼ工程での低下した調整を補う他のコントロール機構は存在してはならない。これは、生合成の他の阻害がないだけではなく、蓄積されたアミノ酸の分解速度を増加させる機構もないことを意味する。Ileならびに1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheは、植物に有毒ではないレベルにて過剰生成されなければならない。最後に、導入された形質は、商業的展開および使用を可能にするように安定し遺伝性でなければならない。
【0040】
トレオニンデアミナーゼをコードするポリ核酸分子の単離および同定
Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY (2001)により記載されるように、トレオニンデアミナーゼをコードする核酸は、標準的な方法により同定および単離できる。トレオニンデアミナーゼをコードする核酸はいずれの原核生物真核生物の種からのものでもあり得る。例えば、トレオニンデアミナーゼまたはそのサブユニットをコードする核酸は、いずれかの種から由来するゲノムDNAライブラリーのスクリーニングにより、または特定の細胞型、細胞系、一次細胞または組織からから由来する核酸から生成されたcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより同定できる。トレオニンデアミナーゼを同定および単離するのに有用なライブラリーの例は、限定されるものではないが、A. tumefaciens株A348、トウモロコシ近交系B73から由来するcDNAライブラリー(Stratagene, La Jolla, California, Cat. #937005, Clontech, Palo Alto, California, Cat. # FL1032a, #FL1032bおよびFL1032n)、トウモロコシ近交系Mo17からのゲノムライブラリー(Stratagene, Cat. #946102)、トウモロコシ近交系B73からのゲノムライブラリー(Clontech, Cat. # FL1032d)あるいはEscherichia coliもしくはSalmonella typhimuriumの便利な株からのゲノムライブラリーを含む。
【0041】
本発明の実施に有用なトレオニンデアミナーゼポリヌクレオチドまたはポリペプチド分子の例を表2に記載する。E. coli野生型トレオニンデアミナーゼ遺伝子(IlvA)(配列番号:1;gi:146450、受入れK03503、バージョンK03503.1)およびその対応するポリペプチド配列(配列番号:2)あるいは配列番号:21をコード化する変異体対立遺伝子は、以下の表2に記載された他のすべての変異対立遺伝子が誘導されるベース遺伝子である。
【0042】
これらのトレオニンデアミナーゼ核酸分子と関連する配列を有する核酸は、本明細書に提供されるトレオニンデアミナーゼ配列の領域に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、クローニングまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含めた標準的な方法により得ることができる。単離したトレオニンデアミナーゼ核酸の配列は、ハイブリダイゼーション、部分配列分析、または適当な宿主細胞中の発現により確認できる。
【0043】
【表2】

【0044】
トレオニンデアミナーゼをコードする配列の全てまたは一部分をコードするDNA断片についてのスクリーニングは、PCRにより、またはハイブリダイゼーション手順を用いるゲノムもしくはcDNAライブラリーからのプラークをスクリーニングすることにより達成できる。そのプローブは、本明細書において提供された核酸から、または他の生物体から得られたトレオニンデアミナーゼ遺伝子に由来できる。あるいは、cDNA発現ライブラリーからのプラークは、トレオニンデアミナーゼに特異的に結合する抗体に対する結合につきスクリーニングできる。他の生物体からのトレオニンデアミナーゼプローブにハイブリダイズするDNA断片、および/またはトレオニンデアミナーゼに対する抗体と免疫反応性であるDNA断片を運ぶプラークをベクターにサブクローニングし、配列決定し、および/またはそれをプローブとして用いて、全てまたは一部分の所望のトレオニンデアミナーゼ遺伝子をコードする他のcDNAまたはゲノム配列を同定できる。
【0045】
cDNAライブラリーは、mRNAの単離、cDNAの生成、および適当なベクターへのcDNAの挿入により調製できる。cDNA断片を含むライブラリーは、トレオニンデアミナーゼに特異的なプローブまたは抗体でスクリーニングできる。一部分のトレオニンデアミナーゼ遺伝子をコードするDNA断片をサブクローニングし、配列決定し、それをプローブとして用いてゲノムトレオニンデアミナーゼ核酸を同定できる。一部分の原核生物または真核生物のトレオニンデアミナーゼをコードするDNA断片は、他の公知のトレオニンデアミナーゼ遺伝子との配列相同性を決定することにより、またはトレオニンデアミナーゼに特異的なメッセンジャーRNAへのハイブリダイゼーションにより確認できる。一旦、トレオニンデアミナーゼの5'、中間および3'末端の一部分をコードするcDNA断片が得られたならば、それらをプローブとして用いて、ゲノムライブラリーからのトレオニンデアミナーゼ遺伝子の完全なゲノムのコピーを同定およびクローン化できる。
【0046】
トレオニンデアミナーゼ遺伝子のゲノムのコピーまたはコピー群の一部分は、ポリメラーゼ連鎖反応、またはゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって単離できる。ポジティブなクローンを配列決定でき、その遺伝子の5'末端は、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY (1989および2001)に記載のごとく、他のトレオニンデアミナーゼ遺伝子の核酸相同性またはRNアーゼ保護分析のいずれも含めた標準的な方法により同定できる。また、標的遺伝子の3'および5'末端は、公知のトレオニンデアミナーゼコード領域を用いて、ゲノム配列データベースのコンピューター検索により位置付けることもできる。一旦、その遺伝子の一部分が同定されると、トレオニンデアミナーゼ遺伝子の完全なコピーを、遺伝子の5'および3'末端の核酸に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてクローニングまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)合成を含めた標準的な方法により得ることができる。トレオニンデアミナーゼ遺伝子の単離した全長コピーの存在は、ハイブリダイゼーション、部分配列分析、またはトレオニンデアミナーゼ酵素の発現により確認できる。
【0047】
植物中のトレオニンデアミナーゼ活性の増加、イソロイシンまたはそのアナログによるフィードバック阻害に対する感受性の低下、および/またはIleならびに1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheの量の増加を生成する能力を有する変異体が望ましい。かかる変異体は、それらが示す活性のレベルまたはタイプにおける機能的な変化を有することができ、時々野生型トレオニンデアミナーゼ核酸およびポリペプチドの「誘導体」と言われる。
【0048】
しかしながら、本発明は、トレオニンデアミナーゼ変異体ならびに「サイレント」変異を持つトレオニンデアミナーゼ核酸も考える。本明細書に用いたサイレント変異は、トレオニンデアミナーゼのヌクレオチド配列を変化させるが、コードされたトレオニンデアミナーゼのアミノ酸配列は変化させない変異である。変異体トレオニンデアミナーゼは、変異体核酸によりコードされ、その変異体は、対応する野生型トレオニンデアミナーゼと比較された場合に実質的にトレオニンデアミナーゼ活性を変更しない1以上のアミノ酸変化を有する。本発明は、サイレント変異を持つ全てのかかる誘導体、変異体およびトレオニンデアミナーゼ核酸に指向される。
【0049】
L−イソロイシンまたはイソロイシンのアミノ酸アナログに抵抗性および/または寛容性である変異したトレオニンデアミナーゼをコードするDNAを種々の方法により得ることができる。この方法は、限定されるものではないが、
1.培養物中の自然変化(spontaneous variation)および直接的変異体選択;
2.いずれかの細胞タイプもしくは組織、種子または植物の組織培養についての直接的または間接的な変異生成手順;
3.化学的変異誘発:部位特異的もしくはサイト指向変異Sambrookら, cited supra)、トランスポゾン変異生成(Bergら, Biotechnology, 1:417 (1983))および欠失変異生成(Mitraら, Molec. Gen. Genetic., 215:294 (1989))によるごとき方法によってクローン化トレオニンデアミナーゼ遺伝子の変異;
4.鍵となる残基における変異の合理的設計;および
5.注目する変異を種々のトレオニンデアミナーゼ核酸に組み込むためのDNAシャフリングを含む。
【0050】
例えば、入手可能なトレオニンデアミナーゼ蛋白質からの遺伝子および/または蛋白質の構造情報を用いて、活性の増加またはイソロイシンもしくはイソロイシンアナログに対する感受性の低下を有する可能性が高いトレオニンデアミナーゼ変異体を合理的に設計できる。かかる蛋白質構造情報は、例えば、E. coli.トレオニンデアミナーゼについて入手可能である(Gallagherら, Structure, 6:465475 (1998))。変異の合理的な設計は、公知の構造(例えば、E. coli)のトレオニンデアミナーゼからのトレオニンデアミナーゼアミノ酸配列で選択されたトレオニンデアミナーゼアミノ酸配列の整列により達成できる。トレオニンデアミナーゼ蛋白質の予測されたイソロイシン結合および触媒の領域は、構造情報の知識と配列相同性とを組み合わせることにより指定できる。例えば、イソロイシン結合ポケット中の残基をイソロイシンによるフィードバック阻害に対する酵素の抵抗性を変更するための変異についての潜在的な候補として同定できる。かかる構造情報を用いて、いくつかのE. coliトレオニンデアミナーゼ変異体を、イソロイシン結合に関与する部位もしくはドメインにおいて合理的に設計した。より詳細には、E. coliトレオニンデアミナーゼ中のL481と類似するアミノ酸は、変異がイソロイシンフィードバック阻害に対してより小さな感受性を有し得る活性なトレオニンデアミナーゼを生成するのに潜在的に有用な残基であるべきである。本発明は、いずれかのこれらの位置にていずれのアミノ酸置換または挿入も考える。別法として、いずれかのこれらの位置のアミノ酸も欠失ならびに置換できる。
【0051】
部位特異的変異誘発を用いて、種々の部位にてアミノ酸の置換、欠失および挿入を生成できる。E. coliトレオニンデアミナーゼコード領域内で作成された特定の変異の例は、以下を含む:
約447位にて、LeuをPheに置換(例えば、配列番号:3参照)
約481位にて、LeuをPheに置換(例えば、配列番号:4参照)
約481位にて、LeuをTyrに置換(例えば、配列番号:5参照)
約481位にて、LeuをProに置換(例えば、配列番号:6参照)
約481位にて、LeuをGluに置換(例えば、配列番号:7参照)
約481位にて、LeuをThrに置換(例えば、配列番号:8参照)
約481位にて、LeuをGlnに置換(例えば、配列番号:9参照)
約481位にて、LeuをIleに置換(例えば、配列番号:10参照)
約481位にて、LeuをValに置換(例えば、配列番号:11参照)
約481位にて、LeuをMetに置換(例えば、配列番号:12参照)、または
約481位にて、LeuをLysに置換(例えば、配列番号:13参照)。
【0052】
同様の変異は、E. coliトレオニンデアミナーゼアミノ酸配列で変異されたトレオニンデアミナーゼのアミノ酸配列の整列によりいずれかのトレオニンデアミナーゼの類似する位置において作成できる。整列に用いることができるE. coliトレオニンデアミナーゼアミノ酸配列の一例は、配列番号:1である。
【0053】
また、有用な変異体は、古典的変異生成および遺伝学的選択により同定できる。
機能的変化は、酵素を遊離L−イソロイシンまたはイソロイシンのアミノ酸アナログに曝露することにより、または制限酵素マッピングまたはDNA塩基配列分析を用いるDNA分子中の変化を検出することにより、遺伝子によりコード化される酵素の活性において検出できる。
【0054】
例えば、イソロイシンに実質的に寛容なトレオニンデアミナーゼをコードする遺伝子は、イソロイシンアナログに寛容性である細胞系から単離できる。略言すると、部分的に区別される植物細胞培養は、低レベルのイソロイシンアナログに対する連続的曝露で成長およびサブクローニングされる。次いで、イソロイシンアナログの濃度は、いくつかのサブカルチャー間隔で徐々に増加される。通常の毒性レベルのアナログの存在下での細胞または組織の増殖は、アナログの存在下で繰り返しサブクローニングされ特徴づけられる。培養細胞の寛容形質の安定性は、期間を変更したそのアナログの不存在下で選択された細胞系を増殖し、次いで、組織をアナログに曝露した後に増殖を分析することにより評価され得る。変更されたトレオニンデアミナーゼ酵素を有することにより寛容な細胞系は、通常有毒な、すなわち、成長阻害物質、レベルのイソロイシンアナログの存在下で酵素活性を有する細胞系を同定することにより選択できる。
【0055】
イソロイシンアナログ抵抗性細胞系からクローン化されたトレオニンデアミナーゼ遺伝子は、米国特許第4,581,847号(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)に記載のごとき標準的な方法により、同一または他のアミノ酸アナログ(群)に対する寛容性につき評価できる。
【0056】
イソロイシンのアナログに低下した感受性を有するトレオニンデアミナーゼを持つ細胞系を用いて、フィードバック抵抗性のトレオニンデアミナーゼを単離できる。イソロイシンアナログに寛容な細胞系からのDNAライブラリーを生成でき、全てまたは一部分のトレオニンデアミナーゼ遺伝子をコードするDNA断片を、一部分のトレオニンデアミナーゼ遺伝子をコードするcDNAプローブへのハイブリダイゼーションにより同定できる。変更された遺伝子の完全なコピーは、クローニング手順または適当なプライマーを用いるPCR合成により得ることができる。トレオニンデアミナーゼをコードする変更された遺伝子の単離は、発現されるべきトレオニンデアミナーゼが、通常有毒なレベルのイソロイシンアナログに曝露された場合に酵素活性を保持するかを決定することにより、形質転換された植物細胞において確認できる。例えば、Andersonら, 米国特許第6,118,047号参照。
【0057】
また、本明細書に提供されるいずれのDNA分子のコード領域は、選択された生物体、例えば、選択された植物または他の宿主細胞タイプにおける発現に最適化できる。
【0058】
また、イソロイシン調節解除されるトレオニンデアミナーゼの変異体の生成は、Gruysら, 米国特許第5,942,660号および第5,958,745号、Asrarら, 米国特許第6,091,002号および第6,228,623号;およびSlaterら, Nature Biotechnology, 17:1011 (1999)に記載されている。
【0059】
導入遺伝子およびベクター
一旦、例えば、トレオニンデアミナーゼまたはそのドメインをコードする核酸が、得られ増幅されると、それはプロモーターに作動可能に連結され、所望により、他の要素と連結して導入遺伝子を形成される。
【0060】
大部分の遺伝子は、プロモーターとして知られ、かつ形質発現を調節する領域を有する。プロモーター領域は、典型的には、原核生物および真核細胞の双方におけるコード配列から上流に見出される。プロモーター配列は、下流の遺伝子配列の転写の調節を供し、約50〜約2,000ヌクレオチド塩基対を典型的に含む。また、プロモーター配列は、遺伝子発現のレベルに影響できるエンハンサー配列のごとき調節配列を含む。いくつかの単離したプロモーター配列は、異種遺伝子、すなわち、本来または相同性の遺伝子と異なる遺伝子の遺伝子発現を提供できる。また、プロモーター配列は、強力または弱いかあるいは誘導性であることが知られている。強力なプロモーターは、高レベルの遺伝子発現を供するが、弱いプロモーターは非常に低レベルの遺伝子発現を提供する。誘導性プロモーターは、外因性に加えた薬剤または環境もしくは発育の刺激に応じて、遺伝子発現をオンオフすることを可能にするプロモーターである。また、プロモーターは、組織特異的または発育の調節を含むことができる。十分なレベルの遺伝子発現ならびに形質転換細胞の容易な検出および選択を供する強力なプロモーターが有利であり得る。また、かかる強力なプロモーターは、望ましい場合に高レベルの遺伝子発現を提供し得る。
【0061】
本発明の導入遺伝子中のプロモーターは、注目する遺伝子、例えば、トレオニンデアミナーゼをコードする核酸からのトレオニンデアミナーゼの発現を提供できる。好ましくは、そのコード配列は、細胞の全体のIleおよびArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe含量における増加を生じるように、遊離L−イソロイシンによるフィードバック阻害に対する植物細胞の寛容性の増加を生じるように発現される。また、プロモーターは、遺伝子発現を外因性に加えた薬剤によりオンオフを切り替えることができるように誘導性であり得る。また、そのコード領域と、植物中の組織特異的発現または発生上で調節された遺伝子発現を提供するプロモーターとを組み合わせることも望ましいであろう。
【0062】
本発明に有用なプロモーターは、限定されるものではないが、ウイルス、色素体、細菌性、バクテリオファージまたは植物プロモーターを含む。有用なプロモーターは、CaMV 35S promoter (Odellら, Nature, 313:810 (1985))、CaMV 19S (Lawtonら, Plant Mol. Biol., 9:31F (1987))、nos (Ebertら, Proc. Nat. Acad. Sci. (U.S.A.), 84:5745 (1987))、Adh (Walkerら, Proc. Nat. Acad. Sci. (U.S.A.), 84:6624 (1987)), スクロース合成酵素(Yangら, Proc. Nat. Acad. Sci. (U.S.A.), 87:4144 (1990)), α−ツブリン(tubulin)、ナピン、アクチン(Wangら, Mol. Cell. Biol., 12:3399 (1992))、cab (Sullivanら, Mol. Gen. Genet., 215:431 (1989))、PEPCaseプロモーター(Hudspethら, Plant Mol. Biol., 12:579 (1989))、7Sα' コングリシニンプロモーター (Beachyら, EMBO J., 4:3047 (1985))、R遺伝子複合体と関連するもの (Chandlerら, The Plant Cell, 1:1175 (1989))を含む。好ましいプロモーターは、種子強化プロモーター、例えば、大豆7sα'、7sα、lea9、Arabidopsis per1およびBrassica napus ナピンを含む。本発明の実施に有用な他のプロモーターは当業者に利用可能であると考えられる。
【0063】
また、色素体プロモーターを用いることができる。大部分の色素体遺伝子は、多重サブユニット色素体をコード化したRNAポリメラーゼ(PEP)ならびに単一サブユニットの核をコードしたRNAポリメラーゼのためのプロモーターを含む。核をコード化したポリメラーゼ(NEP)プロモーターについての共通配列、およびいくつかの本来の色素体遺伝子に特異的なプロモーター配列のリストは、Hajdukiewiczら, EMBO J., 16:4041-4048 (1997)(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)に見出すことができる。
【0064】
用いることができる色素体プロモーターのレベルは、Zea May色素体RRN(ZMRRN)プロモーターを含む。そのZMRRNプロモーターは、Arabidopsis thaliana色素体RNAポリメラーゼが存在する場合に、遺伝子の発現を駆動できる。本発明に用いることができる同様のプロモーターは、Glycine max色素体RRN(SOYRRN)およびNicotiana tabacum色素体RRN(NTRRN)プロモーターである。3つのプロモーターの全てが、Arabidopsis色素体RNAポリメラーゼにより認識できる。PRNプロモーターの一般的な特徴は、米国特許第6,218,145号に記載されている。
【0065】
さらに、転写エンハンサーまたはエンハンサーの複製を用いて、特定のプロモーターからの発現を増加できる。かかるエンハンサーの例は、限定されるものではないが、CaMV 35Sプロモーターおよびオクトピン合成酵素遺伝子(Lastら、米国特許第5,290,924号)からのエレメントを含む。例えば、本発明に従い用いるベクターがocsエンハンサーエレメントを含むように構築され得ると考えられる。このエレメントは、Agrobacterium (Ellisら, EMBO J., 6:3203 (1987))のオクトピン合成酵素(ocs)遺伝子からの16塩基対のパリンドロームエンハンサーとして最初に同定され、少なくとも10の他のプロモーター(Bouchezら, EMBO J., 8:4197 (1989))に存在する。ocsエレメントのごときエンハンサーエレメントおよびそのエレメントの特に複数のコピーの使用が、単子葉植物形質転換のコンテキストに適用された場合に隣接したプロモーターからの転写のレベルを増加させるように作用するであろうことが提案されている。また、限定されるものではないが、根細胞プロモーター(Conklingら, Plant Physiol., 93:1203 (1990))のごとき組織特異的なプロモーターおよび組織特異的なエンハンサー(Frommら, The Plant Cell, 1:977 (1989))は、ABA―および膨張誘導性(turgor-inducible)プロモーターを含めた誘導性プロモーター等として特に有用であると考えられる。
【0066】
転写開始部位とコード配列の開始との間のDNA塩基配列(すなわち、翻訳されていないリーダー配列)が、遺伝子発現に影響を及ぼすことができるので、特定のリーダーも使用したいかもしれない。好ましいリーダー配列は、付属の遺伝子の最適な発現を指令すると予測された配列を含むものを含む、すなわち、mRNA安定性を増加または維持し、翻訳の不適当な開始を防止し得る好ましいコンセンサスリーダー配列を含むと考えられる(Joshi, Nucl. Acid Res., 15:6643 (1987))。かかる配列の選択は、当業者により容易になすことができる。双子葉植物および特に大豆中で高度に発現される遺伝子から由来する配列が好ましい。
【0067】
また、注目する、例えば、トレオニンデアミナーゼの遺伝子をコードする核酸は、色素体、例えば、葉緑体にトレオニンデアミナーゼポリペプチドの輸送を促す色素体輸送ペプチドを含むことができる。選択された色素体輸送ペプチドをコードする核酸は、トレオニンデアミナーゼのコード配列と一般的にインフレーム連結する。しかしながら、色素体輸送ペプチドは、トレオニンデアミナーゼのN末端またはC末端のいずれかに位置できる。
【0068】
また、構築体は、転写を終了し、得られたmRNAのポリアデニレーションを可能とするようにシグナルとして作用する3'末端の核酸と共に注目するアミノ酸を含むであろう。3'エレメントの例は、Agrobacterium tumefaciensのノパリン合成酵素遺伝子(Bevanら, Nucl. Acid Res., 11:369 (1983))、Agrobacterium tumefaciensのオクトピン合成酵素遺伝子からのT7転写体のためのターミネーターおよびジャガイモまたはトマトからのプロテアーゼ阻害物質Iまたは阻害物質II遺伝子の3'末端からのものを含むが、当業者に知られた他の3'エレメントも考えられる。AdhイントロンI(Callisら, Genes Develop., 1:1183 (1987))、スクロース合成酵素イントロン(Vasilら, Plant Physiol., 91:5175 (1989))またはTMVオメガエレメント(Gallieら, The Plant Cell, 1:301 (1989))のごとき調節エレメントは、望ましい場合にさらに含まれる。これらの3'翻訳されていない調節配列をAn, Methods in Enzymology, 153:292 (1987)に記載のように得ることができるか、またはClontech, Palo Alto, Californiaのごとき商業的な源から入手可能なプラスミド中に既に存在している。3'非翻訳調節配列は、標準的な方法によりトレオニンデアミナーゼの3'末端に操作可能に連結できる。本発明の実施に有用な他のかかる調節エレメントは当業者に利用可能であり、当業者により用いることもできる。
【0069】
また、選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子は本発明に有用である。かかる遺伝子は、マーカー遺伝子を発現する細胞に区別される発現型を与え、かくして、かかる形質転換細胞がそのマーカーを有しない細胞から区別されるのを可能とできる。選択マーカー遺伝子は、化学手段により、すなわち、選択的な薬剤(例えば、除草物質、抗生物質等)の使用を通じて選択できる形質を与える。レポーター遺伝子またはスクリーニング遺伝子は、観察または試験を通じて、すなわち、「スクリーニング」(例えば、R−遺伝子座形質)により同定できる形質を与える。もちろん、適当なマーカー遺伝子の多数の例が当該技術分野において知られており、本発明の実施に使用できる。
【0070】
本発明と連結した使用のための可能な選択マーカーは、限定されるものではないが、ネオマイシン抵抗性をコードし、ネオマイシン、カナマイシン、G418等を用いて選択できるneo 遺伝子(Potrykusら, Mol. Gen. Genet., 199:183 (1985));ビアラホス抵抗性をコードするbar遺伝子;変更されたEPSP合成酵素蛋白質をコードし、かくしてグリホサート抵抗性を与える遺伝子 (Hincheeら, Biotech., 6:915 (1988));ブロモキシニルに対する抵抗性を与えるKlebsiella ozaenaeからのbxnのごときニトリラ−ゼ遺伝子(Stalkerら, Science, 242:419 (1988));イミダゾリノン、スルホニル尿素誘導体または他のALS阻害化学薬品に対する抵抗性を与える変異体アセト乳酸合成酵素遺伝子(ALS)(EP 0 154 204);メトトレキセート抵抗性DHFR遺伝子(Thilletら, J. Biol. Chem., 263:12500 (1988));除草物質ダラポンに対する抵抗性を与えるダラポンデハロゲナーゼ遺伝子;あるいは5−メチルイソロイシンに対する抵抗性を与える変異したトレオニンデアミナーゼ遺伝子を含む。変異体EPSP合成酵素遺伝子が使用される場合、適当な色素体または葉緑体シグナルペプチド(CTP)をEPSPSコード領域に融合されるべきである。
【0071】
1つの具体例において、選択マーカーは、一般的にグリホサートと呼ばれるN−ホスホノメチルグリシンに対して抵抗性である。グリホサートは、アミノ酸およびビタミンを含む芳香族化合物の生合成に導くシキミ酸経路を阻害する。特に、グリホサートは、酵素5−エノールピルビル−3−ホスホシキミ酸合成酵素(EPSP合成酵素またはEPSPS)の阻害により、5−エノールピルビル−3−ホスホシキミ酸へのホスホエノールピルビン酸および3−ホスホシキミ酸の転化を阻害する。グリホサート寛容性植物は、酵素が好ましくはグリホサート寛容性である高レベルのEPSP合成酵素を生成する能力を植物のゲノムに挿入することにより生成できることが示された(Shahら, Science, 233:478-481 (1986))。野生型EPSPS酵素の変異体が単離され、それはEPSPSアミノ酸コード配列中の変更の結果としてグリホサート寛容性である。Kishoreら, Ann. Rev. Biochem., 57:627-663 (1988); Schulzら, Arch. Microbiol., 137:121-123 (1984); Sostら, FEBS Lett., 173:238-241 (1984); Kishoreら, Fed. Proc., 45:1506 (1986)参照。
【0072】
グリホサート寛容性EPSP合成酵素またはグリホサート分解酵素をコードする核酸の植物への導入は、植物をグリホサートに寛容性にすることができる。グリホサート寛容性植物の生産方法は、例えば、米国特許第5,776,760号および第5,627,061号;およびWO92/00377(それらの開示をここに出典明示して本明細書の一部とみなす)において入手可能である。
【0073】
形質転換体を選択するためにシステム中で用いることができる選択マーカー遺伝子のもう一つの例示的な具体例は、Streptomyces hygroscopicusからのbar遺伝子またはStreptomyces viridochromogenesからのpat遺伝子のごとき酵素ホスフィノスリシンアセチル基転移酵素をコードする遺伝子である(米国特許第5,550,318号)。酵素ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)は、除草物質ビアラホス、ホスフィノスリシン(PPT)中の有効成分を不活性化する。PPTは、グルタミン合成酵素を阻害し(Murakamiら, Mol. Gen. Genet., 205:42 (1986); Twellら, Plant Physiol., 91:1270 (1989))、アンモニアの急速な蓄積および細胞死をもたらす。
【0074】
使用し得るスクリーニングマーカー(screenable marker)は、限定されるものではないが、様々な色素形成基質が知られている酵素をコードするβ−グルクロニダーゼまたはuidA遺伝子(GUS);植物組織中でアントシアニン色素(赤色)の生成を調節する産物をコードするR遺伝子座遺伝子(Dellaportaら, Chromosome Structure and Function, pp. 263-282 (1988));様々な色素形成基質が知られている酵素をコードするβ−ラクタマーゼ遺伝子(例えば、PADAC、色素産生性セファロスポリン)(Sutcliffe, Proc. Nat. Acad. Sci. (U.S.A.), 75:3737 (1978));色素産生性カテコールを変換できるカテコールジオキシゲナーゼをコードするxylE遺伝子(Zukowskyら, Proc. Nat. Acad. Sci. (U.S.A.), 80:1101 (1983));α−アミラーゼ遺伝子(Ikutaら, Biotech., 8:241 (1990));チロシンをDOPAおよびドーパキノンに酸化し、今度は濃縮して容易に検出可能な化合物のメラニンを形成できる酵素をコードするチロシナーゼ遺伝子(Katzら, J. Gen. Microbiol., 129:2703 (1983));それについての色素形成基質が存在する酵素をコードするβ−ガラクトシダーゼ遺伝子;生物発光検出を可能とするルシフェラーゼ(lux)遺伝子(Owら, Science, 234:856 (1986));あるいはカルシウム感受性の生物発光検出に使用し得るエクオリン遺伝子 (Prasherら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 126:1259 (1985))または緑色蛍光蛋白質遺伝子(Niedzら, Plant Cell Reports, 14:403 (1995))さえを含む。形質転換細胞のlux遺伝子の存在は、例えば、X線フィルム、シンチレーション計数、蛍光分光測光、低光量ビデオカメラ、光子計数カメラ、またはマルチウェルルミノメトリー(Luminometry)を用いて検出し得る。また、このシステムが、組織培養プレート上のごとき生物発光についての集団スクリーニング、または全体植物スクリーニングのためさえにつき開発され得ることも描かれる。
【0075】
加えて、導入遺伝子を構築し使用して、植物細胞内の細胞内区画に遺伝子産物のターゲティングを供するか、または蛋白質を細胞外の環境に向けることもできる。これは、輸送またはシグナルペプチド配列をコードする核酸を特定の遺伝子のコード配列に連結することにより一般的に達成されるであろう。その得られた輸送またはシグナルのペプチドは、各々、特定の細胞内または細胞外の目標に蛋白質を移行させるであろう。多数の場合に、その輸送またはシグナルのペプチドは、その蛋白質の細胞コンパートメントへの輸送を促した後に取り出される。輸送またはシグナルのペプチドは、細胞内膜、例えば、液胞、ビヒクル、色素体、ミトコンドリア膜を通って蛋白質の輸送を促すことにより作用するが、シグナルペプチドは、細胞外膜を通って蛋白質を指令する。細胞の内外のコンパートメントに蛋白質の輸送を促すと、これらの配列は、遺伝子産物の蓄積を増加し得る。
【0076】
かかる使用の具体的な例は、注目する遺伝子、例えば、トレオニンデアミナーゼの遺伝子の細胞質にではなく色素体のごとき特定の細胞器官への指令に関係する。これは、Arabidopsis SSU1Aシグナルペプチドの使用により例示され、そのペプチドは蛋白質の色素体に特異的なターゲティングを与える。別法として、導入遺伝子は、色素体輸送ペプチドをコードする核酸、またはプロモーターとトレオニンデアミナーゼをコードする核酸との間で作動可能に連結したrbcS (RuBISCO)輸送ペプチドをコードする核酸を含むことができる(色素体標的ペプチドの総説については、Heijneら, Eur. J. Biochem., 180:535 (1989); Keegstraら, Ann. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol., 40:471 (1989))参照)。また、導入遺伝子が植物細胞に導入すべきならば、導入遺伝子は植物転写終了およびポリアデニル化シグナルならびに植物トレオニンデアミナーゼ遺伝子の3'末端に連結した転写シグナルを含む。
【0077】
本来の植物のトレオニンデアミナーゼ遺伝子内にコード化されない外因性色素体輸送ペプチドを用いることができる。色素体輸送ペプチドは、典型的には、長さが40〜70アミノ酸であり、翻訳後に機能して蛋白質を色素体に向ける。色素体に移入して成熟蛋白質を得る間または直後にその輸送ペプチドを切断する。植物トレオニンデアミナーゼをコードする遺伝子の完全なコピーは、色素体輸送ペプチド配列を含み得る。その場合には、外因性に得られた色素体輸送ペプチド配列をその導入遺伝子に組み合わせることが必要ではないかもしれない。
【0078】
その遺伝子の産物がアミノ末端輸送ペプチドを含む前蛋白質として発現され、選択された色素体に輸送される限りは、外因性の色素体輸送ペプチドをコードする配列は、様々な植物核内遺伝子から得ることができる。かかるシグナルペプチド配列を含むことが知られている植物遺伝子産物の例は、限定されるものではないが、リブロースビホスフェートカルボキシラーゼの小サブユニット、フェレドキシン、クロロフィルa/b結合蛋白質、核遺伝子によりコード化された葉緑体リボソーム蛋白質、ある種の熱ショック蛋白質、アセト乳酸合成酵素のごときアミノ酸の生合成酵素、3−エノールピルビルホスホシキミ酸合成酵素、ジヒドロジピコリン酸合成酵素等を含む。あるいは、輸送ペプチドをコードするDNA断片は、前記にリストされたごとき輸送ペプチドの公知の配列から全体的または部分的のいずれかにて化学合成し得る。
【0079】
その輸送ペプチドをコードするDNA断片の源にかかわらず、それは翻訳開始コドンを含み、宿主植物の色素体により認識され、その色素体において適当に機能するであろうアミノ酸配列として発現されるであろう。また、それを切断して成熟酵素を得る場合、輸送ペプチドとトレオニンデアミナーゼ酵素との間の結合にてアミノ酸配列に注目が与えられであろう。ある種の保存されたアミノ酸配列が同定され、ガイドラインとして機能し得る。トレオニンデアミナーゼコード領域との輸送ペプチドコード配列の正確な融合は、例えば、便利な制限部位を導入するために1または双方の核酸の操作を必要とし得る。これは、部位特異的変異誘発、化学合成されたオリゴヌクレオチドリンカーの挿入等を含めた方法により達成し得る。
【0080】
一旦得られると、色素体輸送ペプチド配列は、標準的な方法を用いて、導入遺伝子においてプロモーターおよびトレオニンデアミナーゼのコード領域に適切に連結できる。植物細胞に機能的なプロモーターを含み、下流の複数のクローニング部位を有するプラスミドを構築するか、または商業源から得ることができる。色素体輸送ペプチド配列は、制限酵素を用いてプロモーターから下流に挿入できる。次いで、トレオニンデアミナーゼコード領域を色素体輸送ペプチド配列の3'末端から直ぐ下流でかつインフレームで挿入でき、その結果、色素体輸送ペプチドは、トレオニンデアミナーゼのアミノ末端に翻訳して融合される。一旦形成されると、その導入遺伝子は、他のプラスミドまたはベクターにサブクローン化できる。
【0081】
植物細胞内の細胞内区画への遺伝子産物のターゲティングも細胞内区画への遺伝子の直接的な送達により達成し得ることを考える。例えば、植物の色素体形質転換は、P. Maliga (Current Opinion in Plant Biology, 5:164-172 (2002)); Heifetz (Biochimie, 82:655666 (2000)); Bock (J. Mol. Biol., 312:425-438 (2001));およびDaniellら, (Trends in Plant Science, 7:8491 (2002))により記載されている。
【0082】
次いで、トレオニンデアミナーゼ遺伝子および/または他の注目する遺伝子を含む導入遺伝子を構築した後に、そのカセットを植物細胞に導入できる。植物細胞のタイプ、遺伝子発現レベル、およびその遺伝子によってコードされた酵素の活性に依存して、トレオニンデアミナーゼをコードするDNAの植物細胞への導入は、イソロイシンまたはイソロイシンのアミノ酸アナログに対する寛容性を与えて、植物細胞のイソロイシン含量を変更できる。
【0083】
本発明に含まれたいくつかの構築体を表3に記載する。
【0084】
【表3】

【0085】
核酸の組合せの使用
本発明の1つの具体例は、トレオニンデアミナーゼをコードする核酸と、AHAS II(アセトヒドロキシ酸合成酵素)をコードするE. coliのIlvGおよび/またはIlvM遺伝子との組合せを含む。かかるアセトヒドロキシ酸合成酵素はアミノ酸フィードバック阻害に付されず、基質として2−ケト酪酸に優先を有する。1つの具体例において、その活性は単一の融合ポリペプチドに制限される。もう一つの具体例は、アミノ酸非感受性アスパラギン酸キナーゼ−ホモオセリンデヒドロゲナーゼ(AK-HSDH)とトレオニンデアミナーゼ、および潜在的にAHASIIとの組合せを含む。1つの具体例において、S. marcescensからの変異体thrA1遺伝子(OmoriおよびKomatubara, J. Bact., 175:959 (1993))は、AK−HSDH 対立遺伝子である。これらの核酸は、色素体輸送ペプチドに翻訳して融合し得る。
【0086】
AHAS酵素は、高等植物の全体にわたって存在するとが知られ、酵母Saccharomyces cerevisiaeのごとき種々の微生物および腸内細菌、E. coliおよびSalmonella typhimurium(米国特許第5,731,180号)において判明している。また、多数のこれらの種における正常なAHASの産生の遺伝的根拠は、良好に特徴づけられている。例えば、E. coliおよびSalmonella typhimuriumの双方において、AHASの3つのアイソザイムが存在し;これらのうちの2つは除草物質に感受性であるが、第3のものは感受性ではない。これらの各アイソザイムは、1つの大きなサブユニット蛋白質および1つの小さなサブユニット蛋白質を所有し;I1vIH、I1vGMおよびI1vBNオペロンにマッピングされる。酵母において、単一のAHASアイソザイムはILV2座にマッピングされた。各ケースにおいて、感受性および抵抗性の形態が同定され、様々な対立遺伝子の配列が決定された(Fridenら, Nucl. Acid Res., 13:3979-3998 (1985); Lawtherら, PNAS USA, 78:922-928 (1982); Squiresら, Nucl. Acids Res., 811:5299-5313 (1983); Wekら, Nucl. Acids Res., 13:4011-4027 (1985); Falco およびDumas, Genetics, 109:21-35 (1985); Falcoら, Nucl. Acids Res., 13:4011-4027 (1985))。
【0087】
タバコにおいて、AHAS機能は、2つの非連結遺伝子、SuRAおよびSuRBによりコードされる。N末端の推定上の輸送領域はより実質的には異なるが、その成熟蛋白質におけるヌクレオチドレベルおよびアミノ酸濃度の双方で、2つの遺伝子間に実質的な同一性が存在する(Leeら, EMBO J., 7:1241-1248 (1988))。他方、アラビドプシスは、単一のAHAS遺伝子を有し、それは完全に配列決定されている(Mazurら, Plant Physiol., 85:1110-1117 (1987))。高等植物におけるAHAS遺伝子の配列間の比較は、その配列のある領域の高レベルの保存を示し;具体的には、少なくとも10の領域の配列保存が存在する。これらの保存された領域が酵素の機能に非常に重要であり、その機能の保持が実質的な配列保存に依存することが従前に仮定された。従って、本発明は、植物中のIleおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheレベルを増加させるための植物におけるAHASの過剰発現を考える。
【0088】
アスパラギン酸キナーゼ(AK)は、トレオニン、イソロイシン、リジンおよびメチオニンの生合成における第1工程を触媒する酵素である。植物におけるアスパルテートファミリーのアミノ酸の生合成は、色素体において生じる(Bryan (1980) In: The Biochemistry of Plants, Vol. 5, B. Miflin (Ed.) Academic Press, NY, p. 403参照)。調節解除されたトレオニンの過剰発現は、従前に、葉において55% (Shaul and Galili, Plant Physiol., 100:1157 (1992))、および種子において15倍 (Karchiら, Plant J., 3:721(1993))遊離L−トレオニンの細胞内レベルを増加させることが示されている。
【0089】
野生型または調節解除されたアスパラギン酸キナーゼのいずれかの過剰発現は、色素体中の遊離トレオニンの利用可能なプールを増加させるであろう。野生型、変異体、または調節解除されたトレオニンデアミナーゼの過剰発現と組み合わされる場合に、イソロイシンに変換されたトレオニン量は増加する。アスパラギン酸キナーゼ(AK)に加えて、ホモオセリンデヒドロゲナーゼ(HSD)およびトレオニン合成酵素を用いて、遊離トレオニンのレベルをさらに増加できる。
【0090】
本発明に有用な調節解除されたアスパラギン酸キナーゼは、トレオニン非感受性のレベルを所有でき、0.1mMトレオニンの存在下でアスパルテートのKm濃度にて、アスパラギン酸キナーゼ酵素は、トレオニンが不存在であるアッセイ条件に対して10%を超える活性を示す。本発明に有用な調節解除されたホモセリンデヒドロゲナーゼは、0.1mMトレオニンおよびアスパルテートセミアルデヒドのそのKm濃度にて、酵素がトレオニンが不存在であるアッセイ条件に対して10%を超える活性を示すようなトレオニン非感受性のレベルを所有する。アスパラギン酸キナーゼおよびホモオセリンデヒドロゲナーゼ酵素についてのVmax値は、それらに対応する野生型酵素の0.01−100倍の範囲内になることができる。そのアスパラギン酸キナーゼおよびホモオセリンデヒドロゲナーゼ酵素のKm値は、それらに対応する野生型酵素の0.01−100倍の範囲内になることができる。
【0091】
ホスホホモオセリンをトレオニンに変換するのを担う酵素トレオニン合成酵素は、Methylobacillus glycogenesにおいて過剰発現される場合の内因性レベルを超えてトレオニンレベルを約10倍増強することが示されている(Motoyamaら, Appl. Microbiol. Biotech., 42:67 (1994))。加えて、タバコ細胞培養物中で過剰発現されたE. coliトレオニン合成酵素は、全体のトレオニン合成酵素活性における6倍の増加からトレオニンの10倍増強されたレベルを生じた(Muhitch, Plant Physiol., 108 (2 Suppl.):71 (1995))。従って、本発明は、植物中のトレオニンレベルを増加させるために植物中のトレオニン合成酵素の過剰発現を考える。これを本発明に使用して、トレオニンデアミナーゼによるIleならびに1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe産生のためのトレオニン供給の増強を保証できる。
【0092】
宿主細胞の形質転換
注目する遺伝子、例えば、トレオニンデアミナーゼ遺伝子を含む導入遺伝子は、公知の発現ベクターにサブクローン化でき、トレオニンデアミナーゼ発現を検出および/または定量できる。このスクリーニング方法は、形質転換した植物細胞の色素体中のトレオニンデアミナーゼ遺伝子の発現、およびトレオニンデアミナーゼの発現を同定するために有用である。
【0093】
色素体ベクターは、原核細胞および真核細胞中の導入遺伝子の容易な選択、増幅および形質転換を提供するさらなる核酸、例えば、pUC8, pUC9, pUC18, pUC19, pUC23, pUC119, およびpUC120のごときpUC由来ベクター、pSK由来ベクター、pGEM由来ベクター、pSP由来ベクター、あるいはpBS由来ベクターを含む。さらなる核酸は、細菌宿主中でベクターの自律複製を提供するための複製開始点、好ましくは抗生物質抵抗性または除草物質抵抗性をコードする選択マーカー遺伝子、導入遺伝子中でコード化された核酸または遺伝子を挿入する複数部位を提供するユニークな複数クローニング部位ならびに原核細胞および真核細胞の形質転換を増強する配列を含む。
【0094】
植物および原核細胞の双方における発現に有用であるもう一つのベクターは、ベクターpGA582により例示されるSchilperoortら, 米国特許4,940,838に記載された二成分のTiプラスミドである。この二成分のTiプラスミドベクターは、前記のAnにより従前に特徴付けされている。この二成分のTiベクターは、E. coliまたはAgrobacteriumのごとき原核生物細菌中で複製できる。また、Agrobacteriumプラスミドベクターを用いて、植物細胞に導入遺伝子を輸送できる。二成分のTiベクターは、好ましくは、効率的な植物細胞変換を提供するノパリンT DNAの左右の境界、選択マーカー遺伝子、T境界領域中のユニークな複数クローニング部位、colE1複製開始点および広範囲の宿主領域レプリコンを含む。本発明の導入遺伝子を運ぶ二成分のTiベクターを用いて、原核細胞および真核細胞の双方を形質転換できるが、好ましくは、それを用いて、植物細胞を形質転換する。例えば、Glassmanら、米国特許第5,258,300号参照。
【0095】
次いで、その発現ベクターを利用可能な方法により原核細胞または真核細胞に導入できる。双子葉植物に特に有効な改質転換の方法は、限定されるものではないが、未成熟胚の微粒子銃(米国特許第5,990,390号)、またはW.J. Gordon-Kammら, Plant Cell, 2:603 (1990); M.E. Frommら, Bio/Technology, 8:833 (1990);およびD.A. Waltersら, Plant Molecular Biology, 18:189 (1992)により記載されたタイプII胚形成カルス細胞、またはD'Halluinら, The Plant Cell, 4:1495 (1992);もしくはKrzyzek, 米国特許第5,384,253号により記載されたタイプI胚形成カルスの電気穿孔法を含む。また、DNAでコーティングしたタングステンウィスカーでボルテックスすることによる植物細胞の形質転換およびDNA含有リポソームへの細胞の曝露による形質転換を用いることができる。
【0096】
イソロイシンオーバープロデューサー(overproducer)細胞系の選択のための戦略
組織培養技術を用いる所望のイソロイシンアナログ抵抗性のイソロイシンオーバープロデューサー変異体の効率的な選択は、選択条件の注意深い測定を必要とする。これらの条件は、その細胞集団のバルクの増殖を阻害しつつ培養物中のイソロイシンまたはイソロイシンアナログ抵抗性のイソロイシンオーバープロデューサー細胞の増殖および蓄積を可能とするように最適化される。その状況は、集団における個々の細胞の生命力が近隣の細胞の生命力に高度に依存し得るという事実により複雑になる。
【0097】
細胞培養物がイソロイシンまたはイソロイシンアナログに曝露される条件は、化合物と組織との相互作用の特徴により決定される。また、毒性度および阻害率のごとき因子が考慮されるべきである。培養における細胞による化合物の蓄積ならびに培地および細胞の双方におけるその化合物の持続性および安定性が考慮されることが必要である。
【0098】
培養生存度および形態学に関するイソロイシンまたはイソロイシンアナログの効果が注意深く評価される。培養物の植物再生能力に衝撃を有さないアナログ曝露条件を選択することは特に重要である。また、アナログ曝露条件の選択は、そのアナログが細胞を死滅させるか、または単に細胞分裂を阻害するかにより影響を受ける。
【0099】
選択プロトコールの選択は、前記の考慮に依存する。簡潔に後記されたプロトコールは、選択手順に利用され得る。例えば、イソロイシンまたはそのアナログによる増殖阻害に抵抗性である細胞を選択するために、液体懸濁培養物中の微細に分割された細胞を、短時間の高イソロイシンまたはアナログレベルに曝露できる。次いで、生存細胞は、回収およ蓄積するのを可能とし、次いで、引き続いて長時間再曝露される。別法として、組織的に部分的に分化した細胞培養物を増殖し、最初は低レベルの遊離L−イソロイシンまたはそのアナログに連続的に曝露してサブカルチャーされる。次いで、濃度をいくつかのサブ培養間隔で徐々に増加させる。これらのプロトコールを選択手順において利用できるが、本発明はこれらの手順に限定されるものではない。
【0100】
抵抗性細胞系の選択および特徴付け
通常阻害レベルのイソロイシンアナログの存在下で良好に増殖することが観察される細胞または組織が回収されるまで選択が行なわれる。これらの細胞「系」は、1以上のイソロイシンアナログの存在下でいくつかのさらなる回数でサブカルチャーされ、非抵抗性細胞を取出し、次いで、特徴付けされる。得られた抵抗性の量は、種々のアナログ濃度の存在下でこれらの細胞系の増殖と、未選択の細胞または組織の増殖とを比較することにより決定される。培養細胞の抵抗性形質の安定性は、種々の期間アナログの不存在下で単に選択された細胞系を増殖させ、次いでアナログに組織を再曝露した後に増殖を分析することにより評価し得る。また、抵抗性細胞系は、アナログの作用部位がトレオニンデアミナーゼ内に存在することおよび/またはイソロイシンアナログ(群)による阻害に低い感受性を与えるように、変異が形成されるか、およびいかなる変異が形成されるかを確認するin vitroでの化学試験を用いて評価し得る。
【0101】
トレオニンデアミナーゼ遺伝子の一時的発現は形質転換細胞中で検出および定量できる。遺伝子発現は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析、クローン化されたトレオニンデアミナーゼに特異的な抗体を用いる定量的ウェスタンブロット分析、またはイソロイシンまたはイソロイシンのアミノ酸アナログの存在下で酵素活性を検出することにより定量できる。クローン化されたトレオニンデアミナーゼの組織および細胞内の位置は、クローン化されたトレオニンデアミナーゼに特異的な抗体または細胞成分の分別を用いる免疫化学的染色法、および引き続いての生化学的および/または免疫学的な分析により決定できる。また、クローン化されたトレオニンデアミナーゼの薬剤に対する感受性を評価できる。次いで、トレオニンデアミナーゼ、またはイソロイシンのアミノ酸アナログまたは遊離L−イソロイシンによる阻害に寛容なトレオニンデアミナーゼの発現を供する導入遺伝子を用いて、単子葉植物および/または双子葉植物の組織細胞を形質転換し、形質転換された植物および種子を再生できる。形質転換された細胞は、除草物質抵抗性によってのごとく、選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子の存在を選択できる。トレオニンデアミナーゼ遺伝子の一時的な発現は、クローン化されたトレオニンデアミナーゼに特異的な抗体を用いて、またはRT−PCR分析によりトランスジェニック胚形成カルス中で検出できる。
【0102】
植物修飾用遺伝子
前記のごとく、選択マーカー遺伝子およびレポーター遺伝子として機能する遺伝子は、本発明の導入遺伝子、ベクターおよび植物中で、トレオニンデアミナーゼまたはそのドメインをコードする核酸と作動可能に組み合わせることができる。加えて、他の作物学的な形質は、本発明の導入遺伝子、ベクターおよび植物に加えることができる。かかる形質は、限定されるものではないが、虫害抵抗性または寛容性;病気抵抗性または寛容性(ウイルス、細菌性、菌類、線虫);ストレス抵抗性または寛容性、例示的に、干ばつ、熱、冷え、凍結、過剰な水分、塩ストレス、酸化ストレスに対する抵抗性または寛容性;収穫の増加;食物含有量および性質;物理的な外観;雄性不稔性;ドライダウン(drydown);独立性(standability)、多産性;デンプン特性;油の量および質等を含む。本発明の植物にかかる形質を与える1以上の遺伝子を組み込み得る。
【0103】
寛容性に対する環境またはストレス抵抗性
種々の環境ストレスを許容する植物の能力の改良は、遺伝子の発現を通じて達成できる。
例えば、凍結温度に対する抵抗性の増大は、Winter Flounder (Cutlerら, J Plant Physiol., 135:351 (1989))のものまたはその合成遺伝子誘導体ごとき「凍結防止」蛋白質の導入を通じて与えら得る。また、改善された冷え寛容性は、色素体中のグリセロール−3−ホスフェートアセチル基転移酵素の発現増加を通じて与えられ得る(Wolterら, EMBO J., 11:4685 (1992))。酸化ストレスに対する抵抗性は、スーパーオキシドジスムターゼの発現により与えることができ(Guptaら, Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.), 90:1629 (1993))、グルタチオンレダクターゼによって改善できる(Bowlerら, Ann Rev. Plant Physiol., 43:83 (1992))。
【0104】
植物水分含量、全体的な水ポテンシャル、浸透ポテンシャルおよび膨脹に好ましくは影響する遺伝子の発現が、干ばつを許容する植物の能力を増強し、従って、有用になると考えられる。例えば、浸透活性な溶質の生合成をコードする遺伝子の発現が、干ばつに対する保護を与え得ることが提案されている。このクラス内にあるのは、マンニトール脱水素酵素(Lee and Saier, J. Bacteriol., 258:10761 (1982))およびトレハロース−6−ホスフェート合成酵素(Kaasenら, J. Bacteriol., 174:889 (1992))をコードする遺伝子である。
【0105】
同様に、他の代謝物質は、酵素機能または膜完全性(Loomisら, J. Expt. Zoology, 252:9 (1989))のいずれも保護でき、従って、これらの化合物の生合成をコードする遺伝子の発現は、マンニトールと同様または相補性に乾燥抵抗性を与え得る。干ばつおよび/もしくは乾燥の間に浸透活性である代謝物質を天然に生じる、および/またはいくつかの直接的な保護効果を供する他の例は、フルクトース、エリトリトール、ソルビトール、ズルシトール、グルコシルグリセロール、スクロース、スタキオース、ラフィノース、プロリン、グリシン、ベタイン、オノニトール(ononitol)およびピニトール(pinitol)を含む。例えば、米国特許第6,281,411号参照。
【0106】
3つのクラスの後期胚形成蛋白質は、構造的な類似性に基づいて指定されている(Dureら, Plant Molecular Biology, 12:475 (1989)参照)。全ての3つのLEA群からの構造遺伝子の発現は、干ばつ寛容性を与え得る。有用で有り得る水ストレス中に導入された他のタイプの蛋白質は、チオールプロテアーゼ、アルドラーゼおよび膜貫通輸送体を含み、それらは、干ばつストレス中に種々の保護的および/または修復タイプの機能を与え得る。例えば、PCT/CA99/00219(Na+/H+交換ポリペプチド遺伝子)参照。また、脂質生合成に影響する遺伝子は、干ばつ抵抗性を与えるのに有用で有り得る。
【0107】
また、乾燥土壌からの水抽出の増加を可能とする特定の形態学的形質に関連する遺伝子の発現は、有用で有り得る。また、ストレスの時間の間に再生の適応度を増強する遺伝子の発現は、有用で有り得る。また、ストレスの時間の間に穀粒発育不全を最小化する遺伝子の発現が、収穫される粒量を増加させ、従って価値があろうことが提案される。
【0108】
遺伝子の導入および発現を通じて、水をより効率的に利用できる植物は、土壌水利用能が制限されていない場合でさえ、全体的なパフォーマンスを改善し得る。水利用能に関連する全範囲のストレスを横切って水の使用を最大化する植物の能力を改善する遺伝子を導入すると、収穫安定性、または収穫パフォーマンスの一貫性が実現され得る。
【0109】
植物の組成または質
植物の組成を変更して、例えば、天然蛋白質の発現を上昇させる、貧弱な組成を持つものの発現を低下させる、天然蛋白質の組成を変化させる、優れた組成を所有する完全に新しい蛋白質をコードする遺伝子を導入することを含めた種々の方法でアミノ酸のバランスを改善し得る。例えば、米国特許6,160,208号(種子貯蔵蛋白質発現の変更)参照。植物の油含量を変更する遺伝子の導入は価値があり得る。例えば、米国特許6,069,289号および第6,268,550号(ACCase遺伝子)参照。例えば、分岐度を増加させることにより植物のデンプンの栄養価を増強した遺伝子を導入し、その結果、その代謝を遅らせることにより、雌牛におけるデンプンの利用を改善できる。
【0110】
植物の作物学的特徴
植物が生長できるかを決定する因子のうちの2つは、栽培期中の平均の毎日の温度および寒気(frosts)の間の時間の長さである。植物発育の調整に関与する遺伝子、例えば、トウモロコシ中で同定された葉舌がなくラフな鞘遺伝子の発現は、有用で有り得る。
【0111】
遺伝子は、独立性および他の植物成長特徴を改善するであろうトウモロコシに導入され得る。より強力な茎、改善された根系を与える、あるいは耳落下(ear droppage)を防止もしくは低下させる遺伝子の発現は、農場主に価値があるであろう。
【0112】
栄養素利用
有効な栄養素を利用する能力は植物の成長における制限因子であり得る。遺伝子の導入によって、栄養素取込み、pH極度を寛容し、植物の貯蔵プールを通じて流動化、代謝活性についての有効性を変更できる。これらの修飾は、植物がより効率的に有効栄養素を利用するのを可能にするであろう。例えば、植物中に通常存在し、栄養素利用に関与する酵素の活性の増加は、栄養素の有効性を増大し得る。かかる酵素の例はフィターゼであろう。
【0113】
雄性不稔性
雄性不稔性はハイブリッド種子の生成に有用であり、雄性不稔性は遺伝子の発現を通じて生成され得る。病気感受性から雄性不稔性を分離することは、形質転換を介するTURF−13の導入を通じて可能となり得る。Levings, (Science, 250:942-947, (1990))参照。また、育種目的、および穀物生産のために雄性不稔性を回復することが必要であり得るので、雄性不稔性の回復をコードする遺伝子が導入され得る。
【0114】
植物再生および種子の再生
形質転換された胚形成カルス、分裂組織、胚、葉盤等を用いて、形質転換されたトレオニンデアミナーゼ遺伝子の安定した遺伝を示すトランスジェニック植物を生成できる。イソロイシンのアミノ酸アナログまたは遊離L−イソロイシンに対する満足なレベルの寛容性を示す植物細胞系は、当該技術分野において知られた方法により寛容形質を発現する成熟植物および種子を得るために植物再生プロトコールを介する(例えば、米国特許第5,990,390号および第5,489,520号;およびLaursenら, Plant Mol. Biol., 24:51 (1994))。植物再生プロトコールは、体細胞胚の発生ならびに根および苗条の引き続いての生育を可能にする。
【0115】
寛容性形質が植物の区別された器官で発現されるか、および未分化細胞培養物において専ら発現されないかを決定するために、再生成した植物を、再生された非形質転換植物に対し、植物の種々の部分において存在するIleおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheのレベルにつきアッセイできる。トランスジェニック植物および種子は、標準的な方法を用いてIleおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe含量およびイソロイシンアナログに対する抵抗性における変化を示す形質転換細胞および組織から生成できる。葉および種子のIleおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe含量が増加することが特に好ましい。阻害量のイソロイシンまたはそのアナログの存在下での酵素の比活性における変化は、Widholm, Biochimica et Biophysica Acta, 279:48 (1972)に記載された形質転換細胞中の酵素活性を測定することにより検出できる。また、全体のIleおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe含量における変化は、Jonesら, Analyst, 106:968 (1981)により記載されたごとき標準的な方法により評価できる。
【0116】
次いで、成熟植物は、その形質を発現することが知られている細胞系から得られる。可能であれば、再生された草木を自家受粉する。加えて、再生された植物から得られた花粉は、作物学的に重要な同系繁殖系の種子生育植物に交雑される。いくつかの場合において、これらの同系繁殖系の植物からの花粉を用いて、再生された植物に授粉する。その形質は、第1および後の世代の子孫における形質の分離を評価することにより遺伝学的に特徴づけられる。その形質が商業上有用であれば、組織培養中で選択された形質の植物中の遺伝率および発現は、特に重要である。
【0117】
大豆、他の豆果、シリアルおよび他の植物におけるIleおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe過剰生成の商業的価値は、多数の異なるハイブリッド組合せが販売に利用可能であれば、最も大きい。農場主は、成熟、独立性または他の農業形質のごときかかる差に基づいて1種以上の雑種を典型的には生育する。加えて、一部の国に適合された雑種は、成熟、病気および虫害抵抗性のごとき形質の差のためにもう一つの部分に適合されない。このために、多数の親同系繁殖系へのIleおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe過剰生成を生じる必要があり、その結果、多数のハイブリッドの組合せが生成しかねない。
【0118】
変換プロセス(戻し交配)は、元来のオーバープロデューサー系を正常なエリート系に交配させ、次いで、通常の親に子孫を戻し交配させることにより実行される。この交配からの子孫は、いくつかの植物が過剰生成の原因である遺伝子を運ぶが、いくらかが運ばないように、分離するであろう。かかる遺伝子を運ぶ植物は、通常の親に再度交配され、過剰生成および正常な生成につきもう一度分離する子孫が生じるであろう。元来の通常の親が過剰産生系に変換され、まだ通常の親において元来判明した全ての他の重要な属性を所有するまで反復される。分離戻し交配プログラムは、Ileおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPheオーバープロデューサー系に変換されるべきである全てのエリート系に実行される。
【0119】
戻し交配に引き続いて、新しいオーバープロデューサー系、および良好な商業的な雑種を作成する系の適当な組合せは、過剰生成ならびに一連の重要な農業形質につき評価される。元来の通常の系および雑種のタイプに真実であるオーバープロデューサーラインおよび雑種は生成される。これは、その系または雑種が一般的に、商業上成長するであろう一連の環境条件下の評価を必要とする。高いIleおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe大豆の生成のために、そのハイブリッド種子の双方の親がその高いIleおよび1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe特性に同型であることを必要とし得る。申し分なく行なう雑種の親の系が増加し、標準的なハイブリッド種子生成プラクティスを用いて、ハイブリッド生成に用いられる。
【0120】
本明細書において生成されたトランスジェニック植物は、種々の商業的および研究的目的に有用であると期待される。トランスジェニック植物は、植物(例えば、ヒトの食物または動物飼料中の栄養的な含量を改善した)から収穫された穀物の消費者に有益な形質を所有できるように、伝統的農業における使用につき創製できる。かかる使用において、植物は、ヒト食物または動物の飼料中のそれらの穀物の使用のために一般的に生長させる。しかしながら、茎、殻、根、塊茎、花、増殖性(vegetative)パーツ等を含めた植物の他のパーツも、動物サイレージ、発酵飼料、バイオ触媒の一部として、または観賞の目的のための使用を含めた有用性を有し得る。
【0121】
また、注目する分子が植物パーツ、種子等から抽出または精製される場合、トランスジェニック植物は、蛋白質または他の分子の商業的製造における使用を見出すこともできる。また、植物からの細胞または組織を培養、in vitroにて生育または発酵させて、かかる分子を製造し得る。
【0122】
また、トランスジェニック植物は商業的な繁殖プログラムにおいて用いるか、または関連する農作物種の植物に交配もしくは栽培し得る。その組換えDNAによるコード化された改良は、例えば、プロトプラスト融合により、例えば、大豆細胞から他の種の細胞に移行し得る。
以下の実施例は、本発明のある種の態様をさらに例示するために提供される。
【0123】
実施例1
この実施例は、トレオニンデアミナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド対立遺伝子変異体を含有する植物発現ベクターの構築を記載する。
【0124】
特に、アミノ酸L481を、調節解除したトレオニンデアミナーゼの合理的設計につき選択した。各々が、ilvA L481F変異体対立遺伝子より高いまたは低いIC50Ile値を有するいくつかの変異体対立遺伝子が生じた。これらの対立遺伝子を使用して、トランスジェニック植物における使用につき、トレオニンデアミナーゼに対するフィードバック非感受性の範囲を決定した。表2(上記)は、アミノ酸位置481にてilvA中で作成されたアミノ酸置換をリストする。
【0125】
本明細書中に記載された実施例において、制限酵素を含むDNA修飾酵素は、New England Biolabs (Beverly, MA)から購入した。オリゴヌクレオチドプライマーは、Invitrogen Life Technologies (Carlsbad, California)によって合成された。全ての他の化学物質は、Sigma-Aldrich (St Louis, MO)から購入した。蛋白質決定は、記載されているように実施した(Bradford, Anal. Biochem., 72:248-254 (1976))。
【0126】
使用されたilvA対立遺伝子は、GenBankデータベース(受託番号 K03503; Lawtherら, Nucleic Acids Res., 15:2137 (1987))において入手可能である配列番号: 2をコードする野生型E. coli ilvA トレオニンデアミナーゼ遺伝子(配列番号: 1)から由来した。
【0127】
イソロイシン-調節解除されたトレオニンデアミナーゼ変異体を、E. coliの変異誘発によって発生させ、記載されているように単離した(Gruysら, 米国特許第5,942,660号; Asrarら, 米国特許第6,091,002号および第6,228,623号;およびSlaterら, Nature Biotechnology, 7:1011-1016 (1999))。
【0128】
ilvA219 (L447F) 変異体を含有する変異 E. coli トレオニンデアミナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は配列番号: 14であり、そのそれぞれの翻訳されたポリペプチド配列は配列番号: 3である。ilvA466 (L481F) 変異体を含有する変異 E. coli トレオニンデアミナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は配列番号: 15である。全変異体をDNA配列決定分析によって確認した。
【0129】
プラスミドpMON53905 (図1)を制限酵素BamH1で消化して、5.9Kbp骨格断片を生じた。この断片は、下記の構築体に対する共通の骨格として働いた。
【0130】
プラスミド pMON25666 (図2)をBamH1で消化して、3.8および2.8 Kbpの2つの断片を生じた。次いで、2.8 Kbp断片を、pMON53905からの5.9Kbp骨格断片に連結して、pMON53910 (図3)と名付けられたプラスミドを生じた。このプラスミドは、野生型ilvA遺伝子(配列番号: 1)を含有し、対照として働いた。
【0131】
プラスミド pMON25694をBamH1で消化して、3.8および2.8 Kbpの2つの断片を生じた。次いで、2.8 Kbp断片を(pMON53905からの) 5.9Kbp骨格断片に連結し、pMON53911 (図4)と名付けられたプラスミドを生じた。このプラスミドは、変異 E. coli トレオニンデアミナーゼ遺伝子、 ilvA219 (L447F) (配列番号: 14)を含有した。
【0132】
プラスミド pMON25695をBamH1で消化して、3.8 および2.8 Kbpの2つの断片を生じた。次いで、2.8 Kbp断片を5.9Kbp骨格断片に連結して、pMON53912 (図5)と名付けられたプラスミドを生じた。このプラスミドは、変異E. coli生合成トレオニンデアミナーゼ遺伝子、ilvA466 (L481F) (配列番号: 15)を含有した。
【0133】
実施例2
トランスジェニック植物中の単離されたilvA 対立遺伝子を用いるさらなる形質転換実験を実施する前に、各対立遺伝子をE. coli中で過剰発現させて、その動的パラメーターを決定した。種々の変異体を含有するトレオニンデアミナーゼに関する動力学データ、およびArabidopsisからのトレオニンデアミナーゼに対して入手可能なデータとの比較を、表4に供する。E. coli ilvA481変異体を、pSE380 (Invitrogen, Carlsbad, California)へとサブクローン化し、発現を、3時間、37℃にて、0.2 mM IPTGによって誘導した。E. coli 対立遺伝子の発現は、SDSPAGEによって視覚化されるように、高く、比較的一定であった。各変異体トレオニンデアミナーゼは、E. coli中の総可溶性蛋白質の50%以上を占めた。唯一の例外は、低い発現および低い酵素活性を有するL481K変異体トレオニンデアミナーゼであった。
【0134】
ilvA中のLeu481でのアミノ酸置換の効果を、L-イソロイシンの存在下および不在下で、定常状態動的分析によって評価した。インビトロ動力学研究における使用のためのトレオニンデアミナーゼポリペプチドを、50 mMリン酸カリウム(pH7.5)、1 mMジチオスレイトール(DTT)、および0.5 mMテトラ酢酸エチレンジアミンを含有するアッセイ緩衝液中のE. coli細胞から抽出した。連続アッセイ方法を使用して、230nm (ε230 (pH7.5) = 540 M-1.cm-1;トレオニン吸収は虫できた(~1%))にて、直接的に、α-ケトブチレートの形成をモニターした。アッセイを、20 μlの1:20 v/v希釈された粗製抽出物を、1mLの最終容量中にL-トレオニン(2.5 mMおよび50 mMの間)を含有するアッセイ容器に添加することによって開始した。L-イソロイシン阻害につき、L-イソロイシンを、0 mMおよび20 mMの間、添加した。動的パラメーターを、データポイントを、GraFit 4.0ソフトウェア (Erithacus Software, Surrey, UK)を用いて、方程式に適合させることによって決定した。比較のため、L481対立遺伝子のkcat値を、野生型IlvA酵素に対するkcat値に対して正規化した。これらの分析の結果を、図6および7に供する。図7中に示される酵素は: 野生型E. coliトレオニンデアミナーゼ(丸印)、L481Y TD酵素(菱形)、L481F TD酵素 (三角形)、およびL481T TD酵素 (四角形)である。また、表4は、種々のE. coli ilvA 対立遺伝子によって生成される変異体トレオニンデアミナーゼ酵素の動的パラメーターを要約する。
【0135】
【表4】

【0136】
全L481対立遺伝子は、基質結合において、正の協同作用(シグモイド曲線)を示し、一方Arabidopsisトレオニンデアミナーゼは、独立活性(典型的な双曲線)を示した(図6)。変異体の協同作用(Hill係数)の程度は、1.1 (pMON25868, L481Y)ないし1.6 (pMON25865, L481Q; pMON25861, L481I)の範囲であった(表4)。興味深いことに、L481Yに対する動力学データの曲線(n = 1.1)は、99%の信頼性で、F-検定(JMP統計ソフトウェア(SAS Institute, Cary, NC)によって、双曲線へと適合した。イソロイシンの存在下で、L481変異体酵素の活性は、97μM (pMON25867, L481V)ないし1,600 μM (pMON25868, L481Y)の範囲のIC50値にて阻害された(図7および表4)。
【0137】
L481変異体はいずれも、より大きいIC50値(表4)の基質結合親和性と妥協しなかった。すなわち、基質結合親和性(Km)は、比較的、残基481のイソロイシン結合ポケットの変異体によって、影響されなかった。L481変異体とは違って、L447F ilvA219変異体は、イソロイシンによって僅かにだけ阻害されたが(IC50 > 20,000 μM)、負の協同性(n = 0.5)を示した。
【0138】
これらの動的データに基づき、100 μM (L481M)ないし1,600 μM (L481Y)のIC50Ileの範囲である4つのL481対立遺伝子を、Arabidopsis形質転換に選択した。
【0139】
次いで、各L481 対立遺伝子を、Arabidopsis植物への形質転換のために、表4記載のE. coli発現プラスミドから、種子特異型植物発現プラスミドへとサブクローン化した。E. coli ilvA481 対立遺伝子を、表4にリストされたE. coli発現プラスミドから切り出し、種子促進型プロモーター (7Sα'; Doyleら, J. Biol. Chem., 261:9228-9238 (1986))、5つのilvA481 対立遺伝子のうちの1つを含有するオープンリーディングフレームに融合されたArabidopsis SSU1A 輸送ペプチド(Starkら, Science, 258:287 (1992))をコードするオープンリーディングフレーム、および3'非翻訳領域(NOS; Depickerら, J. Mol. Appl. Genet., 1(4):361-370 (1982))を含有するカセットとして、中間ベクターへとクローン化した。得られたバイナリー植物形質転換プラスミドpMON69657 (L481P) (図8)、pMON69659 (L481Y) (図9) 、pMON69660 (L481F) (図10) 、pMON69663 (L481I) (図11) 、およびpMON69664 (L481M) (図12)を、Agrobacterium媒介浸潤によって、Arabidopsisへと形質転換した(Beachtoldら, C.R. Acad. Sci. Ser. 111, 316:1194-1199 (1993))。形質転換体を、50 uM グリホサートの存在下で選択した。
【0140】
形質転換された植物抽出物を、比色指標アッセイを用いて、トレオニンデアミナーゼ活性につきスクリーニングした(Szamosiら, Plant Phys., 101:999-1004 (1993))。指標アッセイは、100 mM Tris-HCl pH 9.0, 100 mM KCl, 12.5 mM L-トレオニンを含有する反応緩衝液中で実施した。反応を、50 μlの酵素抽出物を333 μlの最終容量に添加することによって開始した。反応物を、30分間、37℃にてインキュベートし、1N HCl中の333 μlの0.05% DNPH (ジニトロフェニルヒドラジン)でクエンチした。これを、333 μlの4N NaOHで中和する前に、室温にて、10分間、インキュベートした。反応生成物を、使い捨てのキュベット(Sarstedt)に移し、HP8453 ダイオードアッセイ分光光度計を用いて、540 nm にて読んだ。種々のL481 対立遺伝子を含有するいくつかの独立した事象が生じた。pMON69657 (L481P)を有する形質転換体 (図8)は、通常、低い形質転換頻度を有した。低い効率は、形質転換体選択条件のためであり、特定の使用されたトレオニンデアミナーゼ対立遺伝子のためではなかった(データ示されず)。種々のL481 対立遺伝子を有する全生存する形質転換された植物は、対照とは表現型が異なっておらず、正常な種子組を有して、トレオニンデアミナーゼ対立遺伝子の発現が植物の健康に有害ではないことを示した。
【0141】
形質転換された植物中のイソロイシン濃度を決定するために、乾燥させた、成熟したArabidopsis種子および他の栄養組織を収集し、標準アミノ酸分析に付した。簡単に述べれば、5 mgの非種子植物組織を、15分間、室温にて、渦巻かせることによって、100 μLの5% トリクロロ酢酸に抽出した。抽出物を、15分間、16,000gにて遠心分離し、上澄みを、Agilent (Technical Publication, April 2000)による分析のため、HPLCバイアルに移した。アミノ酸濃度を、340 nmの励起波長および450 nmの発光にて、蛍光分光によって測定した。
【0142】
種子中のアミノ酸濃度を決定するために、20 mgの成熟したArabidopsis種子、500 μlの0.5 mmジルコニウム/シリカビーズ(Boise Products, Inc.)および400 μLの抽出緩衝液(100 mMリン酸カリウムpH 7.4, 5 mM塩化マグネシウム、1 mM EGTA、2 mM DTT、2 mM 4-2-フッ化アミノエチルベンゼンスルホニル (AEBSF)、100 μMロイペプチン、10%グリセロール)を、2 mLのネジで蓋をしたバイアルに分割した。種子を、最高設定にて、ビーズビーター(Biospec Products, Inc.)上で、2回の45秒ランにつき、4℃にて微粉砕した。細胞ホモジネートを、4℃にて10分間、16,000 gで遠心し、上澄みを、340 nmの励起波長および450 nmの発光にて、蛍光分光法によって分析した。
【0143】
表5A-5Bは、pMON69659 (L481Y) (図9)、pMON69660 (L481F) (図10)、pMON69663 (L481I) (図11)、および pMON69664 (L481M) (図12) 事象に対するR2世代種子中のイソロイシン蓄積 (ppm)を示す。pMON69659 (L481Y)によって形質転換された事象は、38.1ないし153.9 ppmの範囲で、85.9 ± 37.4 ppm Ileの平均を生成した。pMON69660 (L481F)によって形質転換された事象は、41.4ないし2592 ppmの範囲で、319.6 ± 397.4 ppm Ileの平均を生成した。pMON69663 (L481I)によって形質転換された事象は、55.4ないし728.2 ppmの範囲で、204.3 ± 159.1 ppm Ileの平均を生成した。pMON69664 (L481M)によって形質転換された事象は、42.3ないし1308.6 ppmの範囲で、168.1 ± 232.0 ppm Ileの平均を生成した。トレオニンデアミナーゼをコードする遺伝子によって形質転換されていない対照事象は、平均73.75 ± 2.5 ppm Ileを生成した。L481F (ilvA466) 対立遺伝子に基づく1つの事象8315は、Ileにおいて23倍増加、観察された最大の増加を生成した。
【0144】
形質転換体の大部分は、イソロイシンを蓄積して、対照に対するレベルを増加しなかった。さらに、トランスジェニック植物中に蓄積されたIC50Ileおよびイソロイシンの量の間にいずれの相関も存在しないようであった。例えば、pMON69659 (L481Y)によって形質転換された系統は、最高のIC50Ileを有したが、イソロイシンの有意に上昇したレベルを有するいずれの事象も生成しなかった。
【0145】
【表5−1】

【0146】
【表5−2】

【0147】
生成されたイソロイシンのレベルおよびトレオニンデアミナーゼの相対的な発現レベルの間にいずれかの相関があるかを決定するために、ウエスタンブロットおよび酵素活性分析を、いくつかの蓄積する高イソロイシンおよび低イソロイシン蓄積系統に対して行った。簡単に述べれば、約10 μgの可溶性組成抽出物を、4%-20%グラジエントSDS-PAGEゲル(Zaxis)に負荷した。蛋白質をPVDF膜 (Biorad)に移した。ブロットを、1時間 TBST (0.05% Tween 20を有するトリス緩衝生理食塩水)中の5%ミルクで遮断した。ブロットを、1時間、精製された酵素に対してポリクローナル抗体を含有するウサギ血清 (MR324)の(0.5% BSAを有するTBSTを用いる) 1:3000希釈で調査した。抗ウサギリン酸アルカリ性コンジュゲート抗体によるプロービング後、膜を、Sigma Fast BCIP/NBT錠剤(Sigma, St. Louis, MO)を用いて発色させた。
【0148】
結果は、発現、活性、およびイソロイシン蓄積の間に明確な相関はないことを示した(データ示されず)。全L481 対立遺伝子はウエスタン陽性シグナルを蓄積することを示したが、トレオニンデアミナーゼ蓄積の最高レベルを含有する系統において検出可能であるに過ぎなかった。より低い発現を有する系統において活性を検出するために、より感受性のアッセイを使用することができた(Gruysら, 1999)。
【0149】
実施例3
この実施例は、イソロイシン-規制解除トレオニンデアミナーゼ (TD)酵素 (ilvA466, 配列番号: 15)を、バリンおよびイソロイシン生合成経路に関与するさらなる酵素、つまり、E. coli ilvG アセト乳酸合成酵素 大サブユニット(EC:2.2.1.6; 配列番号: 16)およびilvM アセト乳酸合成酵素 II, 小サブユニット (EC:2.2.1.6; 配列番号:17)をコードするポリヌクレオチド分子と、組み合わせることによって、Arabidopsis植物中のイソロイシンおよびバリン濃度を増加するための方法を記載する。
【0150】
トレオニンデアミナーゼ E. coli IlvA466 対立遺伝子 (配列番号: 15)を、SmaI and PvuII 制限酵素を用いてpMON53912から切り出し、SmaI and PmeI制限部位にて、ベースベクター pMON38207に連結して、pMON58143を作った。ベクター pMON58143 (図13)を、カナマイシン選択下で実施されるAgrobacterium媒介形質転換において使用した。
【0151】
ilvGおよびilvMをコードする遺伝子を、それぞれの一次配列に基づき、プライマー対を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離した。pMON58131は、ilvG遺伝子(配列番号: 16)を含有する。配列番号: 16を、pGEM-Teasy ベクター (Promega Corporation, USA)に連結して、ベクター TTFAGA018992を作成した。ilvG遺伝子(配列番号: 18)の5' ポリヌクレオチド断片を、BspH1およびKpnI制限酵素を用いてTTFAGA018992から切り出し、Arabidopsis SSU1A 輸送ペプチド(配列番号: 19; Starkら, Science, 258:287 (1992))を含有する中間ベクターに連結して、pMON58145を作った。次いで、操作可能に連結されたSSU1A 輸送ペプチド (配列番号: 19)およびilvG遺伝子断片(配列番号: 18)を、KpnIおよびNcoI 制限酵素によって切り出し、pMON58132に連結した。次いで、操作可能に連結された配列番号: 18および19を、BglIIおよび KpnI 制限酵素を用いてpMON58132から切り出し、シャトルベクターpMON36220に連結し、SmaI および KpnI 制限酵素を用いて切り出し、pMON58146に連結した。残りの3' ilvG ポリヌクレオチド断片(配列番号: 20)を、KpnIおよび EcoRI 制限酵素を用いてTTFAGA018992から切除し、配列番号: 18および19による操作可能な連結においてpMON58146に連結して、pMON58147を作った。次いで、SSU1A 輸送ペプチド (配列番号: 19)および完全ilvGコード領域 (配列番号: 16)を、NotIおよびEcoRI 制限酵素を用いてpMON58147から切り出し、pMON64205に連結した。次いで、PmeIおよびBglIIを用いてpMON64205から代わりに切り出されたSSU1A 輸送ペプチド/ilvG カセットを、7s-アルファプロモーター (米国公報2003/0093828) およびアルセリン5 3'非翻訳領域(WO 02/50295-A2)に操作可能に連結して、pMON58136を作った。全カセットを、NotIおよびBspHIを用いてpMON58136から切り出し、形質転換 ベクター pMON38207に連結して、pMON58138を作った。
【0152】
pMON58133は、ilvM ポリヌクレオチド配列 (配列番号: 17)を含有する。配列番号: 17を、PGEM-Teasy (Promega, supra)に連結して、pMON58137を作った。次いで、BspHIおよびNotI 制限酵素を用いて、配列番号: 17をpMON58137から切り出し、(予め、PmeIおよびNcoIによって消化された)pMON58129に連結した。これによって、配列番号: 17を、Napin プロモーター (米国特許第5,420,034号)、Arabidopsis SSU1A 輸送ペプチドおよびADR12 3'-非翻訳領域(米国特許5,981,841)に、操作可能に連結した。このプラスミドはpMON58140と呼ばれる。発現カセットを、BspHIおよびNotI 制限酵素を用いて切り出し、(予め、制限酵素 NotIによって消化された)植物形質転換ベクター pMON38207に連結して、pMON58151を作った。
【0153】
ilvM カセットを、NotIおよびBspHI 制限酵素を用いて、その中間ベクター pMON58140から切り出し、ilvG カセットおよび植物形質転換骨格を含有するpMON58138に連結して、pMON58159を作った。加えて、ilvA466をPvuIIおよびSmaI 制限酵素を用いて、pMON53912から切り出し、pMON58159からのilvGおよびilvM カセットと操作可能に連結して、pMON58162 (図16)を作った。
【0154】
得られたバイナリー植物形質転換プラスミド pMON58143 (ilvA466) (図13)、pMON58159 (ilvG + ilvM) (図14)、およびpMON58162 (ilvA466 + ilvG + ilvM) (図15)を、Agrobacterium媒介浸潤によって、Arabidopsisに形質転換した。(Beachtoldら, C.R. Acad. Sci. Ser. 111, 316:1194-1199 (1993))。形質転換体を、カナマイシンの存在下で選択した。
【0155】
種子中のアミノ酸の濃度を測定するために、5 mgの成熟した種子組織をすりつぶして粉末状にし、粉末を、15分間、室温にて、渦巻かせることによって、100 μlの5% トリクロロ酢酸中に抽出した。抽出物を、15分間、16,000gにて遠心し、上澄みを、製造業者ら (Agilent Technologies, USA)によって記載のとおり、HPLCバイアルに移した。アミノ酸濃度を、340 nmの励起波長および450 nmの発光にて、蛍光分光法によって測定した。
【0156】
いくつかの独立した事象を、各構築体に対して発生させた。乾燥した、成熟した分離Arabidopsis種子を、各事象からプールとして収集し、アミノ酸分析に付した。ilvA466 (pMON58143)によって形質転換された植物からの種子は、ilvA466 (表6A)によって形質転換されていない植物からの種子中に見受けられるイソロイシンの平均レベルよりも約69倍増加を示すイソロイシンの上昇したレベルを含有した。0.60またはそれ以上(Snedecor and Cochran, In: Statistical Methods, 1980)のピアソンの相関係数(r)として定義された正相関が、アルギニン、グルタミン、ロイシン、リシン、トレオニン、チロシン、フェニルアラニン、およびバリンを含めた他の遊離アミノ酸濃度で観察された。
【0157】
ilvG、ilvM (pMON58159)によって形質転換された植物からの種子は、トリプトファン、アラニン、アルギニン、グルタミン、グリシン、セリン、フェニルアラニン、ロイシン、リシン、トレオニン、およびチロシン(表6B)に対する正相関 (r>0.60)とilvGおよびilvMを含有しない対照種子より約15倍増加であるバリンの上昇したレベルを含有した。
【0158】
ilvG、ilvM、およびilvA466 (pMON58162)によって形質転換された植物からの種子は、イソロイシンに関してリシン、フェニルアラニン、トレオニン、チロシン、およびバリン;およびバリンに関してアラニン、グルタミン、セリン、トレオニン、イソロイシンおよびチロシン(表6C)との正相関(r>0.6)を有するイソロイシン (15倍増加)およびバリン (19倍増加)の上昇したレベルを含有した。
【0159】
【表6−1】

【0160】
【表6−2】

【0161】
【表6−3】

【0162】
実施例4
この実施例は、粒子衝撃およびAgrobacterium媒介方法を用いて、トレオニンデアミナーゼ変異体対立遺伝子を含有する発現ベクターによる大豆植物の形質転換を記載する。
【0163】
商業的に入手可能な大豆種子 (Asgrow A3244, A4922)を、一晩(約18-24時間)発芽させ、分裂組織外植片を切り出した。初生葉を取り出して、分裂組織を暴露し、外植片を、粒子送達の方向に垂直に置かれた分裂組織を有する標的培地に置いた。異なるilvA 対立遺伝子 pMON53910、pMON53911、およびpMON53912のコード領域を含有する形質転換ベクターを、CaCl2およびスペルミジンによって、微小な金粒子上へ沈殿させ、引き続いて、エタノール中で再懸濁した。次いで放電デバイス上に置かれたマイラーシート上を、懸濁液で覆った。粒子を、約60% キャパシタンスにて、放電によって、植物組織へと加速した。
【0164】
衝撃後、5-7週間、外植片をWoody Plant Medium (WPM) (McCown & Lloyd, Proc. International Plant Propagation Soc., 30:421 (1981))および75 mM グリホサートに入れて、トランスジェニック芽を選択および成長させた。グリホサート陽性の芽を、衝撃後、約5-7週間で収穫し、選択的豆発根培地(BRM)および25 mM グリホサートに、2-3週間入れた。BRMの組成物を表7に示す。根を生じる芽を、温室に移し、土壌に植えた。選択時健康であったが根を生じなかった芽を、さらなる2週間、非選択的発根培地(グリホサートなしの豆発根培地(“BRM”))に移した。選択から根を生じたいずれかの芽からの根を、温室に移し、土壌に植える前に、グリホサート選択可能マーカーの発現につきテストした。種子収穫まで、植物を、通常の温室条件下で維持し、ここに、この種子をR1種子と定義する。
【0165】
【表7】

【0166】
この培地を、グリホサート (典型的には、0.025 mMまたは0.040 mM)の添加あるなしの両方で使用する。全成分を、一度に1つずつ溶解する。混合物を、滅菌蒸留水を有する容量にし、1ヶ月未満の間、4oCにて、ホイルで覆ったボトル中に保存する。
【0167】
また、大豆植物を、記載のとおり、Agrobacterium-媒介形質転換方法を用いて、pMON58028、pMON58029、および pMON58031で形質転換した(Martinellら, 米国特許第6,384,301号)。この方法のために、関心のある遺伝子を含むプラスミドを含有するAgrobacterium tumefaciensの一晩培養液を、対数期まで成長させ、次いで、当業者に知られる標準的方法を用いて、0.3ないし0.6の最終最適密度まで希釈した。これらの培養液を使用して、下記のとおり調製された大豆胚芽外植片を植菌した。
【0168】
簡単に述べれば、該方法は、切り出された大豆胚芽の分裂組織中の個々の大豆細胞への直接的生殖細胞系形質転換である。表面滅菌および種子の発芽の後、大豆胚芽を取り出す。次いで、外植片を、OR培地、Barwaleら, Plants, 167:473-481 (1986)によって修飾された標準MS培地、および3 mg/L BAP、200 mg/Lカルベニシリン、62.5 mg/Lセフォタキシム、および60 mg/Lベノミル上に置き、暗室で、一晩、15oC にて保存する。次の日、外植片を、手術用メスの刃で傷つけ、下記のとおり調製されたAgrobacterium培養液で植菌する。次いで、植菌された外植片を、室温にて、3日間培養する。
【0169】
形質転換後培養液に引き続いて、次いで、分裂組織領域を、選択剤および芽誘発ホルモンの両方として作用する除草剤グリホサート (Monsanto Company, St. Louis, MO)の存在下で、標準的植物組織培養培地上で培養する。培地組成および培養の長さの詳細は、Martinellら,米国特許6,384,301にある。5ないし6週間後、陽性表現型を有する生存する外植片を土壌に移し、成熟するまで温室条件下で成長させる。
【0170】
5つの個々の分離R1種子のイソロイシン濃度(実施例2に記載のとおり)および高濃度を有する事象を、R1植物へと成長させた。各事象につき、24種子を植えた。得られたR2種子を収穫し、イソロイシン濃度を測定し、導入遺伝子の存在を分析した。同じ分析を、R2種子、R2植物、およびR3種子に対して実施した。
【0171】
実施例5
実施例は、トレオニンデアミナーゼ遺伝子構築体によって形質転換された大豆植物の特徴付けを記載する。トレオニンデアミナーゼ活性を決定するために、単一の種子 (約100 mg)を100 μLの1 X 粉緩衝液中ですりつぶした(表8)。次いで、混合物を、最大速度にて、2-3分間、遠心した。得られた上澄みを、Bio-Rad Bio-Gel P-30 脱塩カラムに適用することによって、脱塩した。
【0172】
脱塩された蛋白質抽出物(25-50 μL)を、100 μLの最終容量のために、5Xアッセイ混合物(表8)に添加した。混合物を、30分間、37℃にてインキュベートした。反応を、1 N HCl中の100 μL 0.05%ジニトロフェニル-ヒドラジンを添加し、引き続いて、10分間、室温にてインキュベートすることによって終了した。次いで、100 μLの4 N NaOHのアリコートを添加し、540 nmでの吸収を分光光度法で測定した。
【0173】
【表8】

【0174】
種子中の遊離イソロイシン濃度を、約50 mgの種子を潰し、潰した物質を遠心バイアルに入れ、次いで重さを計ることによって決定した。1mLの5% トリクロロ酢酸を各試料バイアルに添加した。試料を、渦巻きミキサーを用いて、15分間、室温にて混合した。次いで、試料を、14,000 rpmにて、15分間、微小遠心において測った。次いで、いくらかの上澄みを取り出し、HPLCバイアルに入れ、蓋をした。試料を、分析前に、4℃にて維持した。
【0175】
単一の種子分析を、5種子/事象、および1注入/種子で、全R1 大豆種子に対して行った。R2およびR3種子を代表する引き続いての世代につき、各事象につき10種子、および1注入/事象を有する大量アッセイを使用した。
【0176】
試料を、Agilent Technologies 1100シリーズ HPLCシステムを用いて分析した。0.5 μL アリコートの試料を、10 μlの0.4 N ホウ酸塩緩衝剤pH 10.2 (Hewlett-Packard, PN 5061-3339)中の2.5 μLのOPA (ホウ酸塩緩衝剤中のo-フタルアルデヒドおよび3-メルカプトプロピオン酸, Hewlett-Packard PN 5061-3335)試薬で誘導化した。誘導体を、Agilent Technologies Eclipse(登録商標) XDB-C18 3.5 μm, 4.6×75 mm at 2 mL/分 流速に注入した。
【0177】
【表9】

【0178】
イソロイシン濃度を、蛍光検出(340 nmでの励起, 450 nmでの発光)を用いて測定し、値を10ないし800 μg/mLの範囲の標準曲線から計算した。
【0179】
形質転換された大豆植物中の遊離イソロイシン濃度のこの評価に対する結果は、ヌル対照に対する遊離イソロイシン濃度が種子において約100 μg/gであり、ilvA219およびilvA466 対立遺伝子によって形質転換された植物が、それぞれ約600および1300 μg/g以上を有することを示した。これらのデータは、遊離イソロイシンレベルが、形質転換されていない植物と比較して、規制解除されたトレオニンデアミナーゼ遺伝子によって形質転換された植物において、有意により高いことを示す。
【0180】
トレオニンデアミナーゼ構築体によって形質転換された大豆植物中のトレオニンデアミナーゼ蛋白質の存在を決定するために、野生型およびイソロイシン-規制解除されたトレオニンデアミナーゼ変異対立遺伝子から生じた系統からの成熟した大豆種子を、ウエスタンブロット分析に付した。大豆種子を乾燥させ、すり潰して粉末状にした。20 mgの粉末に、200 μlの1X SDS-PAGE試料緩衝液を添加し、混合物を、4時間、4oCにて、回転しつつインキュベートした。5-10分間沸騰することによって、反応を終了した。次いで、混合物を、14,000 rpmにて、10分間遠心した。得られた上澄みを取っておき、遠心を繰り返した。組み合わされた上澄み画分を、Bio-Rad蛋白質アッセイキット (Bio-Rad)を用いて蛋白質につきアッセイした。
【0181】
次いで、上澄み画分を、10% Tris-HCl緩衝液を用いて、SDS-PAGEによって分離した。試料色素(10% v/v)を添加した後、1 mLの調製された試料を、各試料ウェルに負荷した。ゲルを、トリス-グリシン-SDS 緩衝液において、1時間、140ボルトにてランした。次いで、ゲル中の蛋白質を、予めメタノールおよび移動緩衝液で濡らしたPVDF膜に移した。カートリッジに負荷した後、移動を、冷トリス-グリシン-メタノール緩衝液において、1時間、100ボルトにて行った。遮断工程を、10%乳溶液(0.1% Tween 20を含有する50 mL 総容量 TBS緩衝液(20 mM トリス, pH 7.5および150 mM NaCl)中の5グラム無脂肪粉ミルク)を用いて行った。
【0182】
一次抗体は、1% Tween 20、および1%乳溶液を含有するTBS緩衝液において、1:1000にて希釈されたポリクローナルウサギ抗-トレオニンデアミナーゼ抗体であった。インキュベーションを、1時間、室温にて、または4oCにて、一晩ランした。二次抗体は、Sigma Chemical Coから得られたポリクローナル抗-ウサギ抗体であった。呈色工程を、毎回1% Tween 20を含有するTBSによって、10分間、3度洗浄し、引き続いて、TBSによる10分間洗浄し、次いで染色することによって行った。
【0183】
異型接合系統およびヌル系統に対する、種子成熟の3つの異なる段階での形質転換された大豆植物からのR3種子抽出物のウエスタンブロット分析の結果は、変異体蛋白質の濃度が、種子が成熟するに従い増加することを示す。得られたゲルにおいて、変異体トレオニンデアミナーゼ蛋白質に対応するバンドの位置は目に見え、バンドは、ヌル系統に対応するレーンにおいて存在しないが、形質転換された植物に対応するレーンには現れる。加えて、初期から後期へと成熟が進むにつれ、バンドの強度は明白に増加する。
【0184】
実施例6
この実施例は、トレオニンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチド配列によって形質転換されたR3大豆種子のアミノ酸分析の結果を記載する。表10A-10Rは、トレオニンデアミナーゼによって形質転換されたR3大豆事象に対して、JMP統計ソフトウェア(SAS Institute, Cary, NC, USA)を用いて測定されたアミノ酸濃度の統計学的平均および誤差を供する。データは、接合子体の構造および事象によって並べる。
【0185】
【表10−1】

【0186】
【表10−2】

【0187】
【表10−3】

【0188】
【表10−4】

【0189】
【表10−5】

【0190】
【表10−6】

【0191】
【表10−7】

【0192】
【表10−8】

【0193】
【表10−9】

【0194】
【表10−10】

【0195】
【表10−11】

【0196】
【表10−12】

【0197】
【表10−13】

【0198】
【表10−14】

【0199】
【表10−15】

【0200】
【表10−16】

【0201】
【表10−17】

【0202】
【表10−18】

【0203】
表10Aから10Rに示されるアミノ酸分析の結果は、多くのアミノ酸の濃度が、トレオニンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチド配列によって形質転換された大豆植物中で増加することを示す。データは接合子体の構造によって分離する。接合子体の構造の影響を除去するプールされた予測も提供する。データを、ピアソンの方法を用いる相関分析に付した(SnedecorおよびCochran, In: Statistical Methods, 1982; JMP統計ソフトウェア(SAS Institute, Cary, NC, USA)。数値は、ピアソンの相関係数(r)を表す。0.60 またはそれ以上の正値は、アミノ酸の濃度とIleの濃度の間の正相関を示す。異型接合条件において、アミノ酸Asn、Ser、His、Gly、Thr、Arg、Val、Met、Phe、Leu、およびLysは、Ileレベルと正相関した。同型接合的条件において、PheおよびLysは、Ile濃度と正相関した。
【0204】
【表11】

【0205】
全ての刊行物および特許を、個々に引用により組み込まれるように、ここに出典明示して本明細書の一部とみなす。記述により定義された本発明の精神および範囲内でありながら、多くの変更および修飾を成すことができることが理解されるはずであるため、本発明は示され記載される正確な詳細に制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】図1は、プラスミドpMON53905の制限地図である。
【図2】図2は、プラスミドpMON25666の制限地図である。
【図3】図3は、プラスミドpMON53910の制限地図である。
【図4】図4は、プラスミドpMON53911の制限地図である。
【図5】図5は、プラスミドpMON53912の制限地図である。
【図6】6は、野生型酵素−対−トレオニン濃度の初速度のプロットの提供によるArabidopsisトレオニンデアミナーゼ(ダイヤモン記号)およびE. coliトレオニンデアミナーゼ(円形記号)の速度論的特性を示す。
【図7】図7は、E. coli L481対立遺伝子についてのパーセント酵素活性−対−イソロイシン濃度についてのプロットを提供する。
【図8】図8は、プラスミドpMON69657の制限地図である。
【図9】図9は、プラスミドpMON69659の制限地図である。
【図10】図10は、プラスミドpMON69660の制限地図である。
【図11】図11は、プラスミドpMON69663の制限地図である。
【図12】図12は、プラスミドpMON69664の制限地図である。
【図13】図13は、プラスミドpMON58143の制限地図である。
【図14】図14は、プラスミドpMON58138の制限地図である。
【図15】図15は、プラスミドpMON58159の制限地図である。
【図16】図16は、プラスミドpMON58162の制限地図である。
【配列表フリーテキスト】
【0207】
配列番号:1は、野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのポリヌクレオチド配列を表わす。
配列番号:2は、野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす。
配列番号:3は、447位(Ilv219)にてLeuを置換したPheを有する野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす、
配列番号:4は、位置481(Ilv466)にてLeuを置換したPheを有する野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす、
配列番号:5は、481位にてLeuを置換したTyrを有する野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす。
【0208】
配列番号:6は、481位にてLeuを置換したProを有する野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす。
配列番号:7は、481位にてLeuを置換したGluを有する野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす。
配列番号:8は、481位にてLeuを置換したThrを有する野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす。
配列番号:9は、481位にてLeuを置換したGlnを有する野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす。
配列番号:10は、481位にてLeuを置換したIleを有する野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす。
【0209】
配列番号:11は、481位にてLeuを置換したValを有する野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす。
配列番号:12は、481位にてLeuを置換したMetを有する野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす。
配列番号:13は、481位にてLeuを置換したLysを有する野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列を表わす。
配列番号:14は、447位にてLeuを置換したPheを有するL447F E. coliトレオニンデアミナーゼについてのポリヌクレオチド配列を表わす。
配列番号:15は、481位にてLeuを置換したPheを有するL481F E. coliトレオニンデアミナーゼについてのポリヌクレオチド配列を表わす。
【0210】
配列番号:16は、IlvG AHAS大サブユニットについてのポリヌクレオチド配列を表わす。
配列番号:17は、IlvM AHAS小サブユニットについてのポリヌクレオチド配列を表わす。
配列番号:18は、IlvG 5'断片のポリヌクレオチド配列を表わす。
配列番号:19は、Arabidopsis SSU1A色素体輸送ペプチドについてのポリヌクレオチド配列を表わす。
配列番号:20は、IlvG 3'断片のポリヌクレオチド配列を表わす。
配列番号:21は、野生型E. coliトレオニンデアミナーゼについてのアミノ酸配列変異体を表わす。
配列番号:22は、Arabidopsis OMR1トレオニンデアミナーゼについてのポリヌクレオチド配列を表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発現カセットが、フィードバック非感受性トレオニンデアミナーゼをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含み、第2の発現カセットが、AHASをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含む複数植物発現カセットを含むDNA構築体。
【請求項2】
第1の発現カセットが、フィードバック非感受性トレオニンデアミナーゼをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含み、第2の発現カセットが、AHASの大サブユニットを含み、第3の発現カセットが、AHASの小サブユニットをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含む複数植物発現カセットを含むDNA構築体。
【請求項3】
該プロモーターの各々が、種子強化プロモーターである請求項1または2記載のDNA構築体。
【請求項4】
該プロモーターの各々が、ナピン、7S アルファ、7S アルファ'、7S ベータ、USP 88、強化USP 88、アルセリン5およびオレオシンよりなる群から選択される請求項1または2記載のDNA構築体。
【請求項5】
少なくとも2つの異なる種子強化プロモーターが存在する請求項3記載のDNA構築体。
【請求項6】
該第1のカセットが、配列番号:22を含むフィードバック非感受性トレオニンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む請求項1または2記載のDNA構築体。
【請求項7】
該第1のカセットが、L447F、もしくはL481F、もしくはL481Y、もしくはL481P、もしくはL481E、もしくはL481T、もしくはL481Q、もしくはL481I、もしくはL481V、もしくはL481M、もしくはL481K位のアミノ酸置換を含むトレオニンデアミナーゼ変異体対立遺伝子またはそのサブユニットをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む請求項1または2記載のDNA構築体。
【請求項8】
トレオニンデアミナーゼ変異体対立遺伝子をコードする該ポリヌクレオチドが、L447F、もしくはL481F、もしくはL481Y、もしくはL481P、もしくはL481E、もしくはL481T、もしくはL481Q、もしくはL481I、もしくはL481V、もしくはL481M、もしくはL481K位のアミノ酸置換を含む配列番号:2である請求項1または2記載のDNA構築体。
【請求項9】
該第1のカセットが、該トレオニンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結した色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む請求項1または2記載のDNA構築体。
【請求項10】
該第2の発現カセットが、AHASの大サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む請求項2記載のDNA構築体。
【請求項11】
AHASの大サブユニットをコードするポリヌクレオチドが配列番号:16を含む請求項10記載のDNA構築体。
【請求項12】
色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドが、AHASの該大サブユニットをコードする該ポリヌクレオチドに作動可能に連結した請求項10記載のDNA構築体。
【請求項13】
該第3の発現カセットが、AHASの小サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む請求項2記載のDNA構築体。
【請求項14】
AHASの小サブユニットをコードするポリヌクレオチドが、配列番号:17を含む請求項13記載のDNA構築体。
【請求項15】
色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドが、AHASの該小サブユニットをコードする該ポリヌクレオチドに作動可能に連結した請求項13記載のDNA構築体。
【請求項16】
第1の発現カセットが、フィードバック非感受性トレオニンデアミナーゼをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含み、第2の発現カセットが、AHASの大サブユニットをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した植物細胞中で機能的なプロモーターを含む複数植物発現カセットを含むDNA構築体。
【請求項17】
該プロモーターの各々が、種子強化プロモーターである請求項16記載のDNA構築体。
【請求項18】
該種子強化プロモーターの各々が、ナピン、7S アルファ、7S アルファ'、7S ベータ、USP 88、強化USP 88、アルセリン 5およびオレオシンよりなる群から選択される請求項17記載のDNA構築体。
【請求項19】
少なくとも2つの異なる種子強化プロモーターが存在する請求項16または17記載のDNA構築体。
【請求項20】
該第1のカセットが、配列番号:22を含むフィードバック非感受性トレオニンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む請求項16記載のDNA構築体。
【請求項21】
該第1のカセットが、L447F、もしくはL481F、もしくはL481Y、もしくはL481P、もしくはL481E、もしくはL481T、もしくはL481Q、もしくはL481I、もしくはL481V、もしくはL481M、もしくはL481K位のアミノ酸置換を含むトレオニンデアミナーゼ変異体対立遺伝子を含む請求項16記載のDNA構築体。
【請求項22】
トレオニンデアミナーゼ変異体対立遺伝子をコードする該ポリヌクレオチドが、L447F、もしくはL481F、もしくはL481Y、もしくはL481P、もしくはL481E、もしくはL481T、もしくはL481Q、もしくはL481I、もしくはL481V、もしくはL481M、もしくはL481K位のアミノ酸置換を含む配列番号:2である請求項16記載のDNA構築体。
【請求項23】
該第1のカセットが、トレオニンデアミナーゼをコードする該ポリヌクレオチドに作動可能に連結した色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む請求項16記載のDNA構築体。
【請求項24】
該第2の発現カセットが、AHASの大サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む請求項16記載のDNA構築体。
【請求項25】
AHASの大サブユニットをコードするポリヌクレオチドが配列番号:16を含む請求項24記載のDNA構築体。
【請求項26】
色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドが、AHASの該大サブユニットをコードする該ポリヌクレオチドに作動可能に連結する請求項25記載のDNA構築体。
【請求項27】
植物細胞中で機能的なプロモーターを含む発現カセットが、単量体AHASをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した複数植物発現カセットを含むDNA構築体。
【請求項28】
植物細胞中で機能的なプロモーターを含む第1の発現カセットが、AHASの大サブユニットをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結し、植物細胞中で機能的なプロモーターを含む第2の発現カセットが、AHASの小サブユニットをコードする外因性ポリヌクレオチドに作動可能に連結した複数植物発現カセットを含むDNA構築体。
【請求項29】
該プロモーターの各々が、種子強化プロモーターである請求項28記載のDNA構築体。
【請求項30】
該種子強化プロモーターの各々が、ナピン、7S アルファ、7S アルファ'、7S ベータ、USP 88、強化USP 88、アルセリン5およびオレオシンよりなる群から選択される請求項28記載のDNA構築体。
【請求項31】
少なくとも2つの異なる種子強化プロモーターが存在する請求項28記載のDNA構築体。
【請求項32】
該第1のカセットが、配列番号:16よりなるAHASの大サブユニットを含む請求項28記載のDNA構築体。
【請求項33】
該第1のカセットが、AHASの該大サブユニットをコードする該ポリヌクレオチドに作動可能に連結した色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む請求項29記載のDNA構築体。
【請求項34】
該第2のカセットが、AHASの小サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む請求項28記載のDNA構築体。
【請求項35】
該第2のカセットが、配列番号:17よりなるAHASの小サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む請求項28記載のDNA構築体。
【請求項36】
該第2のカセットが、AHASの該小サブユニットをコードする該ポリヌクレオチドに作動可能に連結した色素体輸送ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む請求項35記載のDNA構築体。
【請求項37】
その同一植物種の非トランスジェニック植物からの種子に比較して、種子中でアミノ酸レベルにおける増加を有するトランスジェニック双子葉植物の生産方法であって、a)請求項1または2記載の構築体を含む導入遺伝子を双子葉植物の再生可能な細胞に導入し;b)該再生可能な細胞を双子葉植物に再生し;c)該植物から種子を収穫し;d)その同一植物種の非トランスジェニック植物からの種子に比較して、アミノ酸レベルが増加した1以上の種子を選択し;次いで、e)該種子を植える工程を含み、ここに、イソロイシンが増加したレベルで存在する場合に、少なくとも1つのさらなるレベルのアミノ酸も増加する該生産方法。
【請求項38】
双子葉植物が、大豆植物である請求項37記載の生産方法。
【請求項39】
アミノ酸レベルの増加が、a)Ileならびに1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe、またはb)1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Leu、Val、Gln、Tyr、Thr、Lys、Ala、SerおよびPheの濃度における増加を含む請求項37記載の生産方法。
【請求項40】
請求項37記載の生産方法により生成されたトランスジェニック大豆植物。
【請求項41】
その同一植物種の非トランスジェニック植物からの種子に比較して、種子中でアミノ酸含量の増加を有するトランスジェニック双子葉植物の生産方法であって、a)請求項16記載の構築体を含む導入遺伝子を双子葉植物の再生可能な細胞に導入し;b)該再生可能な細胞を双子葉植物に再生し;c)該植物から種子を収穫し;d)その同一植物種の非トランスジェニック植物からの種子に比較して、アミノ酸レベルが増加した1以上の種子を選択し;次いで、e)該種子を植える工程を含み、ここに、イソロイシンが増加したレベルで存在する場合に、少なくとも1つのさらなるレベルのアミノ酸も増加する該生産方法。
【請求項42】
双子葉植物が、大豆植物またはアブラナ植物である請求項41記載の生産方法。
【請求項43】
アミノ酸レベルの増加が、a)Ileならびに1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Ala、Leu、Thr、Val、Gln、Tyr、Lys、SerおよびPhe、またはb)1以上のArg、Asn、Asp、His、Met、Leu、Val、Gln、Tyr、Thr、Lys、Ala、SerおよびPheの濃度における増加を含む請求項41記載の生産方法。
【請求項44】
請求項41記載の生産方法により生成されたトランスジェニック大豆植物。
【請求項45】
その同一植物種の非トランスジェニック植物からの種子に比較して、種子中でアミノ酸含量の増加を有するトランスジェニック双子葉植物の生産方法であって、a)請求項27または28記載の構築体を含む導入遺伝子を双子葉植物の再生可能な細胞に導入し;b)該再生可能な細胞を双子葉植物に再生し;c)該植物から種子を収穫し;d)その同一植物種の非トランスジェニック植物からの種子に比較して、アミノ酸レベルが増加した1以上の種子を選択し;次いで、e)該種子を植える工程を含む該生産方法。
【請求項46】
双子葉植物が、大豆植物またはアブラナ植物である請求項45記載の生産方法。
【請求項47】
アミノ酸レベルの増加が、SerまたはValの濃度における増加を含む請求項45記載の生産方法。
【請求項48】
請求項45の生産方法により生成されたトランスジェニック大豆植物。
【請求項49】
請求項40、44または48記載の大豆から生成されたミール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−501634(P2007−501634A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532818(P2006−532818)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014120
【国際公開番号】WO2004/101744
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(506350506)レネッセン リミテッド ライアビリティ カンパニー (3)
【Fターム(参考)】